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ふたりはどんな子?

黒猫のリーナとライオンのキラはいつも一緒。とても仲良し。

~黒猫リーナ~

黒猫リーナは金色の瞳が美しい黒猫の女の子。

体は、他の猫より小さいんだけど大人びた所があるから体の小ささを全く感じさせない。

意外と小さいことを気付いてない子も多いんだって。

強がりで寂しがりで甘えるのがちょっと下手。

面倒見がよくて、誰よりも優しい。

泣いてる子がいればそっと寄り添い包み込む。

滅多なことでは怒らないけど、本気で怒らせたら怖いらしいよ。

嫌いなものは辛いものと熱いもので、好きなものは色々あるけど、本人曰く一番はキラなんだって。

ヒラヒラしたものを見ると我を忘れて突っ走り迷子になっちゃうおっちょこちょいな一面も。

~ライオンのキラ~

ライオンのキラは珍しい青い瞳で生まれた男の子。

泣き虫で甘えん坊でちょっぴりヤキモチやき。

おばけが苦手で好きなものは甘いもの。

もっと大大大好きなものはリーナ。

甘いものを食べ始めると止まらなくなっちゃう困ったちゃんな一面もあるからたまにリーナに怒られるらしい。

だけど、面倒見が良く、楽しませるのが大好きで周りを自然と笑顔に変えちゃうの。

そして、困っている子がいれば誰よりも強くたくましく守ってくれる暖かいヒーローのようなライオンの男の子。

普段は温厚な彼だけど、リーナを傷つける子にはすごく怖い顔で怒るから気をつけてね。

そして、ふたりとも歌とダンスが大好き。

リーナが歌えばキラがハモリ、キラが歌えばリーナが踊る。

にゃっ にゃっ にゃ〜♪

(ガウ ガウ ガウ〜♪)

ガウ ガウ ガオ〜♪

(前足でちょいちょいっ。一回転からの〜。シュタッ ! )

 

キラが歌えばリーナがハモリ、リーナが歌えばキラが踊る。

ガウ ガウ ガウ〜♪

(ニャッ ニャッ ニャー♪) 

にゃっ にゃっ にゃ〜ん♪

(ドシッ。ドシッ。華麗なジャンプで〜ドスーン !! )

合図したわけでもなく自然と一緒に歌って踊る。そんな息ぴったりの仲良しなふたり。

黒猫のリーナはライオンのキラが…ライオンのキラは黒猫のリーナが大好きなんだ。

だからいつも一緒にいるの。

〜〜〜〜

ん ? どうしたの ?

大きさも種族も違うそんなふたりがなんで一緒にいるかって ??

それはね。まだふたりが子供の頃のお話。

はじまりのお話

~綿毛と想い~

ある日、子猫のリーナがお散歩をしていると、どこからか悲しそうな歌声が聴こえて来ました。

〜〜♪〜〜〜♪〜♫〜〜〜〜♪〜〜♬〜……

リーナ:「歌声 ? なんだかまるで泣いてるみたい…どこから聴こえてくるのかしら ? 」

リーナはどこか悲しげなその歌声が気になり声のする方へ行ってみることにしました。

草をかき分けガサガサと…見つかりません。

泉の周りをウロウロと…まだ見つかりません。

小枝の隙間をパキパキと…まだまだ見つかりません。

必死に探しますが、それでも見つかりません。

そのうちあたりは真っ暗になり、悲しげな歌声も聞こえなくなってしまいました。

どこに居るかもわからない。

歌声も聞こえない。

辺りは、いつこわーいおばけが出てくるかもわからないくらいの真っ暗闇。

それでもリーナは悲しそうな声で歌ってるどこかの誰かが悲しいままでいるのが嫌でした。

リーナは黒猫。ほかの動物よりは夜でも少し辺りが見えるのでした。

なので、おばけは怖いけどもう少し探してみることにしたのです。

リーナ:「どこにいるのー ? 何がそんなに悲しいの ? 」

…返事はありません。

リーナ:「怖くないよー ! 泣かなくていいんだよー。」

…返事はありません。

リーナ:「悲しいならそばにいるよー。だからどこにいるのか教えてー !! 」

……返事はありません。

子猫のリーナは1日中探し回ってクタクタです。

ちょうど近くに大きな大木があったので大木の根本で少し休むことにしました。

リーナの小さな手足は1日中ガサガサッ。パキパキッ。と草や枝の間を探し回ってたので、

小枝や小石で傷だらけになっていました。

傷をぺろぺろと舐めながらリーナの寝床からだいぶ離れてしまっている事に気付きました。

それもそのはず。1日中探し回ってましたからね。

リーナがいる大木まではリーナの寝床の近くのお散歩コースから草むらをずっとずーっと先まで抜けて、

大きな泉をぐるっと回り、小枝がたくさん落ちてる茂みの小道をさらにさらに奥まで進んで、

そこからまた草むらの坂道を登った先にありました。

それでも見つからない今も泣いてるかもしれない歌声の主の事を考えると、どうにかしてあげたくて、

でも見つけられなくて…リーナはどうしたらいいのかモヤモヤぐるぐる。

だんだん自分まで悲しくなってきてしまい、大きな声で心のモヤモヤを吐き出すように叫びました。

にゃん。にゃん。にゃおーん。

するとまるでその声に答えるかのようにすぐ近くから

アウ。アウ。アオーン。

と声がするではありませんか。

どうやら大きな大木の裏側から聞こえるようです。

リーナ:「聴こえた !! 」

リーナは一目散にダッシュします。

ガサガサガサガサ…

また、声が聞こえなくなってしまわないように。

バキバキバキバキッ…

また、どこにいるかわからなくなってしまわないように。

ハァハァハァ…

走って。走って。走り続けます。

やっとの想いで大木の裏側に着くと、そこには金色の毛並みの小さな小さなライオンの男の子がいました。

~月夜の出会い~

リーナ:「ハァハァハァ…やっと見つけた…」

リーナ:「こんばんわ。ライオン君。どうしてこんなところで泣いていたの ? 」

ライオン君:「えっ !? 」

ライオンの男の子は突然の訪問者にびっくりしてくりくりとした目を見開きます。

リーナ:「朝から悲しそうに泣いていたでしょ? なんでこんな所でひとりで泣いていたの ? 」

リーナはそっと語りかけます。

ライオン君:「泣いてないよ…歌ってただけ。」

ライオン君:「小鳥が1羽だけで寂しそうだったから…歌えば元気が出るかなって思って。」

ライオン君:「でも小鳥さんもお迎えが来て何処かに行っちゃった。」

ライオン君:「ちゃんとお迎えが来て、ほんと良かった…♪」

ライオンの男の子はとても優しそうな瞳で太陽のような明るくやわらかな笑顔で微笑みました。

これだけ探し回って、

あんな悲しそうな声で、

まるで泣いてるかの様に歌っていたのに「泣いてないよ」なんて言われ、

小さな肉球で猫パンチの一つでもポフっと当てても良さそうなものですが、

リーナは月明かりに照らされたライオンの男の子の優しい笑顔があまりにキレイで…

そしてとても暖かな輝きを放っていて…

“この子にも早くお迎えが来ればいいのに…”

とそんな事を考えているのでした。

ライオン君:「ところで、君はだぁれ ?? 」

リーナ:「私は黒猫のリーナだよ。ライオン君。君のお名前は ? 」

リーナはなるべく明るく答えます。

ライオン君:「ぼく、名前わからないの…」

ライオン君:「僕が生まれてすぐにパパとママは2本足の大きな動物に連れて行かれちゃって…」

ライオン君:「兄弟たちとも大きな動物から逃げてる時に離れ離れになっちゃって…」

ライオン君:「誰も僕の名前を呼んでくれる仲間も…教えてくれる仲間もいなかったから…」

ライオン君:「だから…ぼく、自分の名前わからないの…」

ライオン君:「パパとママの名前も兄弟たちの名前も知らないの…」

ライオンの男の子は寂しそうにぽつりぽつりと答えます。

ライオンの男の子:「だから僕はここでお歌を歌って過ごしてるの。」

ライオンの男の子:「昼間は小鳥たちに。夜はお月様とお星様に。」

ライオンの男の子:「お歌を歌えば小鳥たちも喜んでくれるし、夜は怖くないもん。」

ライオンの男の子:「それに “ぼくは、ここにいるよ” って。」

ライオンの男の子:「そしたら、もしかしたら…いつかお迎えが来るかもしれないでしょ ? 」

ライオンの男の子は、月を見上げながらそっと微笑みそう呟くのでした。

 

 

~リーナの決意~

リーナは知っていました。

2本足の動物に連れて行かれて帰ってきたものはいない事を。

大きな動物に追われて離れてしまったら、再会するのは、とてもとても難しいことを。

もしかするとこのライオンの男の子もわかっているのかもしれません。

それでも、もしかしたら…と。いつかは…と。

希望を捨てずに歌い続けていたのでしょう。

寂しそうに。悲しそうに。泣くように。ずっとずっと…

“この子にはどれだけ待ってもお迎えに来てくれるパパもママも…そして仲間もいないかもしれない…”

その事実がリーナには辛く悲しく、

そして、それでも小鳥を元気づけようとした優しいライオン君にリーナはなんだか胸の奥がキュゥッと締め付けられるのでした。

 

 

リーナ:「…なら、私が君の名前を付けてあげる ! 」

リーナ:「ライオン君 ! 君は金色のキラキラしたキレイな毛並みだから ” キラ ” って名前はどうかな ? 」

リーナ:「お星様みたいにキラキラ輝いてるから ” キラ ” !! 」

ライオンの男の子:「…キラ ? ぼくの…名前… ? 」

リーナ:「そう ! 君の名前はキラ !! 」

リーナ:「どう ? いいでしょ ? 気に入った ?? 」

リーナは少しでもライオンの男の子が寂しくないように…

もう、1人で泣かなくて済むように矢継ぎ早に言葉を紡ぎます。

リーナ:「はじめまして。キラ ! 私は黒猫のリーナ。」

リーナ:「キラ、君を迎えに来た黒猫のリーナだよ !! よろしくねっ♪」

リーナ:「キラ ! 私と一緒に帰ろう♪」

“ライオン君は「キラ」という名前を気に入ってくれたのだろうか ? ”

“キラキラしてるから「キラ」は安直すぎただろうか ? “

”勝手に名付けて怒ってないだろうか ? ”

”勝手に決めた名前を呼び続けてイヤな気持ちになってないだろうか ? ”

”本当に待ってた仲間とは違うだろうけど迎えに来たのが自分で本当に良かったのか ? “

次から次へと不安が湧いて来るのをグッと堪えながらリーナはライオンの男の子が安心できるように笑顔で手を差し出します。

ライオンの男の子は目を見開きました。

目の前に差し出されたその小さなちいさな肉球はあちこち傷だらけだったからです。

よく見ると肉球だけではありません。

手の甲も、足も、身体も、尻尾も、そして目の前で優しく月明かりに照らされながら微笑むその頬もあちこち擦り傷や切傷だらけでした。

ライオンの男の子はこのリーナと名乗る黒猫の少女がここまで来るのにどれだけ大変だったのかを悟ると同時に、

“こんなに傷だらけになるのなら知らんぷりすれば良かったのに…なんでそこまでして…”

”あれ ? いま、名前って言った ? えっ !? ぼくに名前 ?? えぇっ !? なんで !?!? ”

”どうしよう…名前なんてつけられた事ないからわかんないけど感想とか言った方がいいのかな ? ”

”あっ ! でも、毛並みがキレイだって褒めてくれたし、とりあえず先にお礼を言った方がいいのかな ? “

”どうしよう…どうしよう…待ってる。どうしよう……”

なんて事をぐるぐると頭の中で考えながら、

早く何か言わなきゃ ! と思うのですがどうも上手く言葉が出てきません。

“なんでもいいから早く言わなきゃ ! “

と焦る気持ちはあるものの、まるで喉の奥に石ころでも詰まってしまったかのように出てこないのです。

そして、言葉の代わりに出てきたのはクリクリとしたまんまるの目からこぼれ落ちる涙の雫でした。

ぽろぽろぽろぽろと、

とめどなく溢れてくる大粒の涙にライオンの男の子の口から漏れるのは言葉などではなく、

「ふっ…うっ…うぅ…」などの嗚咽や「ズズッ…」などの鼻をすする音だけ。

リーナはそんなライオン君の涙を拭うことなどせず、何かそれ以上声をかけるわけでもなく、

ただ黙って微笑みながらキラと名付けたライオン君の前に手を差し出し続けます。

ただ、ただ、黙って、辛抱強くライオンのキラが握り返してくれるのを待ち続けるのでした。

いったいどれくらい泣き続けたことでしょう。

すごくすごく泣き続けたような気もするし、

大泣きしたのでそのひとときがひどく長く感じただけなのかもしれないし、

自分でもどれくらい泣いたのかもわからず、

もう出てくる涙も無くなってしまったのではないか?と思うくらいひとしきり泣いた後、

ライオンの男の子はなんとか言葉を絞り出すのでした。

キラ:「はっ…はじめ…ましてっ…リーナ。。。ぼぐの…ぼくの名前…は、キラ…だよ。」

キラ:「……む、むか…迎えに…ぎで…ぐれで…うぅ…あ、ありがど…ありがとう…うぅ…」

やっと涙も止まり、もう出てくる涙なんて少しも無いだろうと必死に絞り出した言葉でしたが、

リーナに語りかけると同時にキラの目からはまた大粒の涙が次から次へと溢れ出してくるのでした。

そして、震える手で自分より小さな小さな黒く可愛らしいその手をそっと握り返します。

 

~キラの決意~

リーナ:「…ふぅ」

リーナは無意識に安堵のため息をもらします。

そして、そっとライオンのキラに近づき、キラの頭の上に小さな肉球をぽふっと当てて言います。

リーナ:「キラは泣き虫さんだね♪しょうがないな〜。」

リーナ:「リーナお姉ちゃんが慰めてあげよう♪よしよし♪」

にこにこしながら自分の頭を小さな手でなでなでするリーナにキラは少し頬を赤らめると同時にぷくっと頬を膨らませながら

キラ:「な、泣いてないもん。目にゴミが入っただけだもん ! 」

キラ:「なでなでしなくていいからっ !! それに、僕の方が大きいんだから僕がお兄ちゃんだよ ! 」

などと、わかりやすい照れ隠しをしながら不満げに言います。

そんな不満げなキラの事などお構いなしにリーナはニコニコとキラの頭を撫で続け、

キラもまた不満そうにしながらもその心地よさに大人しく身を委ねるのでした。

リーナ:「えぇ〜。でも、お迎えに来たんだから私がお姉ちゃんでいいんじゃない ? 」

キラ:「ダメ ! ぜったいダメ !! 」

リーナ:「ん〜。なんで ? 」

キラ:「だって…お兄ちゃんじゃないと ! お兄ちゃんじゃないとリーナの事守れないじゃん !! 」

勢いよく言い放つキラにびっくりしてリーナは手を引っ込めます。

リーナ:「…守る ? 」

不意に消えてしまった心地よさを少し残念そうにしながらもキラは言葉を続けます。

キラ:「だって、リーナ傷だらけじゃん !! 」

キラ:「だからもう傷つかなくていいように身体の大きな僕が守ってあげるのっ !! 」

キラ:「だからっ… !! その…お兄ちゃんじゃないと……」

勢い任せに言い出したものの、段々と恥ずかしくなってきたキラの声はどんどん小さくなっていきました。

そして、恥ずかしさをごまかすようにリーナの傷だらけの身体をぺろぺろと舐めてあげるのでした。

毛繕いをしながらよく見ると先程は暗くて見えませんでしたが、

リーナの身体には新しくできた傷だけでなく治ってだいぶ経つであろう古傷もある事に気付きました。

“こんな小さな身体でいっぱい傷だらけになってるなんて…”

”もしかしたらリーナも僕と同じだったのかもしれない…”

キラは、そんな風に思いながら胸の奥がズキンッと痛くなりました。

そして、”もう傷つかなくて済むように僕が守るからね ! ” と心の奥で決意するのです。

なんで、キラがいきなりこんな事を言い出したのかというと…

リーナが優しく微笑み自分の前に手を差し出してくれたあの時、

迎えに来たと温かな言葉をくれたあの時、

そして何より「キラ」と呼んでくれたあの瞬間、

キラにはまるでお月様が自分の願いを聞き届けて迎えに来てくれたように感じたのでした。

 

名前が無いというのは想像以上に辛いもので、

誰かに酷いことを言われたり、

瞳の色が違うと仲間はずれにされたり、

誰も迎えに来てくれない。

そんなたくさんの悲しい事の中でも、キラにとってはとくに辛く悲しいことでした。

大木でキラが歌い続けている間、さまざまな動物達が大木を訪れました。

その多くは大木までの道のりに疲れ果て休みに来るものや迷い込んで帰れずお迎えを待つものなど。

色んな動物たちが大木に来ましたが、どの動物たちもみな自分の名前を持っていました。

そして、キラを見かけると心配して

「なぜここにいるのか ? 」と訪ね、

自分の名前を教えてくれるのにキラにはそれが出来なかったのです。

中にはそんなキラをいじわるな子だと怒ってどこかに行ってしまうものもいました。

キラはそんな後ろ姿を見送りながら”ごめんなさい”と心の中で呟くのが精一杯なのでした。

名前があるということは、付けてくれた誰かがいるということ。

そして…

自分を知ってもらうことができ、

覚えてもらうことができ、

その名を呼んでくれる相手が必ずどこかに居るということなのです。

そんな名すら持たなかったキラは、

まるで誰にも必要とされていないような…

迎えに来てくれる相手なんているはずないと言われているような…

そんな悲しい気持ちがずっとしていました。

だからこそ、リーナが「キラ」と名付け、自分の事を「キラ」と呼んでくれた時、

まるで “ここにいてもいいんだよ” と言われてるみたいで心の中がぽかぽかしたあったかい気持ちでいっぱいになったのでした。

そして、そんなあたたかな気持ちをくれた子猫のリーナがとてもとても大切で、

特別な…宝物のような存在にキラには思えました。

同時に、幼い子ライオンが初めて心から守りたいものを見つけた瞬間でもあります。

だからこそ、あったかい気持ちを分けてくれたリーナに何かしてあげたくて仕方がないのでした。

そんな決意を胸にキラは、リーナの傷が痛くないようにそっとそっと毛繕いをし続けます。

リーナはというと、少しくすぐったそうにしながらもゴロゴロと喉をならしながら気持ちよさそうにしていました。

~想いとおまじない~

気持ちよさそうにしていたリーナですが、何を思ったいきなりこんな事を言い出しました。

リーナ:「あっ ! キラ、私のこと守ってくれるんだよね ? なら…キラは、私のヒーローだね♪」

唐突に言い放つリーナに今度はキラがびっくりして毛繕いを止め、まん丸の目をリーナに向けます。

キラ:「ヒーロー ?? 」

リーナ:「そう ! ヒーロー !! 正義の味方だよ♪」

リーナ:「キラはお星様みたいなキラキラした毛並みで輝いてるし、私を守ってくれるんでしょ ? 」

リーナ:「なら、ある時は海を超えて、ある時は空を飛んで、困った時に必ず駆けつけて助けてくれるスーパーヒーローみたいじゃない ? 」

リーナ:「…だから私のヒーロー♪♪」

キラ:「ヒーロー ? リーナのスーパーヒーロー… ?? 」

キラ:「…うん !! ぼく、リーナのヒーローになる !! 」

キラ:「リーナをどんな事からでも守れるお星様みたいなキラキラのスーパーヒーローになるよ !! 」

そう言ってキラは嬉しさを隠しきれないとでもいうように、温かなまるで太陽のような満面の笑顔で宣言するのでした。

リーナ:「ふふ。よろしくね♪私のヒーローさん♪」

キラ:「まかせてよっ♪♪」

リーナ:「…ってことで、キラはヒーローだからお姉ちゃんは私ってことね♪」

キラ:「えっ !?」

リーナ「だって、キラはお兄ちゃんじゃなくてヒーローなわけだし♪ねっ ? 」

リーナは悪戯げな笑みを見せながら言います。

キラ:「なっ !?それはずるいでしょ !! 」

キラ:「ダメっ !! お姉ちゃんナシっ !! ぜったい反対 !!!! 」

リーナ:「なら、ヒーローやめてお兄ちゃんにする ?? 」

キラ:「んなっっ !? ダメ〜 !! 」

キラ:「ヒーローはやめない !! 」

キラ:「絶対ぜっったいやめないからね !!!! 」

リーナ:「ならやっぱり…」

キラ:「…あっ! あれだ !! 」

リーナ:「…???」

キラ:「ぼく、ヒーローなんだからリーナはヒーローの相棒 ? パートナー ? そんな感じのでいいじゃん ! 」

リーナ:「ん〜。でも…それを言うなら、、、わたし黒猫だしどちらかと言うと敵キャラの方がしっくりくるような…?? 」

キラ:「なんでだよっっ !! 守る相手が敵とか倒せなくなっちゃうじゃん !!!! 」

リーナ:「わたし、逃げ足早いよ♪」

キラ:「そーゆーことじゃなくて……」

リーナ:「ふふっ♪」

キラ:「も〜 ! リーナのいじわる !! 」

さきほど出会ったばかりとは思えないほど

他愛のない話で盛り上がるふたりをお星様とお月様だけが見守っているのでした。

ひとしきり話し終えたあと、リーナが言いました。

リーナ:「そろそろ明日に備えて眠ろうか。」

キラはたくさん泣いたのもあり、目をしょぼしょぼさせながら答えます。

キラ:「明日…目が覚めても…ちゃんといる ? 」

リーナ:「もちろん♪お散歩しながら帰ろう♪」

キラ:「ほんとにほんと ? 夢だったりしないよね ? 明日、起きてもちゃんといるよね ?? 」

キラは、急に不安になって来てしまいました。

“寝てしまったらリーナは自分の前から消えてしまうんじゃないか ? “

“お月様が見せてくれた夢なんじゃないか ? “

そんな考えが頭をよぎって不安で仕方ありません。

それもそうです。

なにしろ、いままでどんなに願っても叶わないと思ってた事が叶っただけでなく、

こんなに心から楽しく過ごした夜は初めてだったのですから。。。

リーナはそんな不安げなキラの様子を見て言いました。

リーナ:「キラにおまじないをかけてあげる♪」

キラ:「おまじない ? 」

リーナ:「そう ! キラの不安が飛んでいきますように…っておまじない。」

そういうと、リーナは自分の鼻先をキラの鼻先にちょこんと当てました。

リーナ:「キラがぐっすり眠れますように…いい夢を見れますように…」

リーナ:「不安がどっかに消えて、明日も笑顔で入れますように…♪」

そう呟いてから鼻を離すと、にこにこしながら言いました。

リーナ:「はいっ ! これでもう大丈夫。」

リーナ:「私のおまじないでキラは明日も笑顔でいられるんだからキラが考えてる怖いことも不安なこともきっと起きないよ♪」

そういうと、キラの尻尾に自分の尻尾をまるで手を繋ぐかのようにそっと絡めて「キラ、おやすみ〜」といいながら隣でスヤスヤ寝始めました。

キラは、そんなリーナを見つめながら

不思議とさっきまでの不安が嘘のように飛んでいった事に少し驚きつつ

“もしかしたらリーナは魔法使いなのかもしれない”

そんな事を考えながら自分も眠りにつくのでした。

2匹はとても穏やかな顔で寄り添い、

夢の世界へ旅立つ姿をお月様とお星様たちだけが

その姿を隠すまでずっと変わらず見守り続けていましたとさ。

これが黒猫リーナとライオンのキラの始まりの物語。

そして、これから続いていく繋がりの物語。

黒猫のリーナとライオンのキラはいつも一緒。とても仲良し。

お読みいただきありがとうございました♡

この物語に込めた想いとちょっとした小話物語がまるで現実に飛び出てきたようなモノ

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