繋結印(きずなむすびのしるし)
黒猫リーナとライオンのキラは今日も仲良し。
おや?今日は黒猫リーナの姿が見えませんね?
キラは広い草原でゴロンとしつつ大きなあくびをして退屈そうです。
リーナはどこに行ったんでしょうか?
そんなひとり退屈そうにしているキラのもとにトラのジュン君がやってきました。
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~印(しるし)と繋がり~
ジュン:「キラ、こんな所で何してるんだ?」
キラ:「あっ…ジュン。暇だったから日向ぼっこしてたとこ。」
キラ:「ジュンもやる?」
ジュン:「別にいいけど、リーナはどうしたんだ?」
そう言いながら、ジュンはキラの横にゴロンっと寝そべります。
キラ:「リーナはユリちゃんとサクラと一緒に ”繋結印(きずなむすびのしるし)” を貰いに街にある ”猫又神社” まで行ったよ」
ジュン:「繋結印?(きずなむすびのしるし?)」
キラ:「知らない?よく神社とか妖精の森とか行くとそこと繋がりを結んだ印としてそこを管理している動物や妖精たちが印を授けてくれるんだよ。」
キラ:「動物たちの場合は、足跡とか妖精たちはその森の葉っぱや花・実なんかを授けてくれるかな」
キラ:「リーナは最近、その印を集めるのが楽しいらしくてね。」
キラ:「オレもリーナと一緒に集めてたんだけど、流石に街にはいけないから今日はお留守番ってわけ。」
ジュン:「へぇ~。繋がりを結んだ印ね~。」
ジュン:「でも、リーナがそういう印を集めたりするのが好きだってのは知らなかったな。」
キラ:「いや。オレも最初は集めるのが楽しいのかと思ってたんだけどなんか違うみたい。」
キラ:「もちろん印を集めるのも楽しいとは思うよ。」
キラ:「だけど、それよりは繋がれるのがうれしいみたい。」
ジュン:「繋がれる?」
キラ:「そう。そこにいる神様や動物たち・妖精・自然なんかと繋がれるのが楽しいんだって。」
ジュン:「だけど、妖精たちだって気まぐれで殆ど姿を表さないし、神さんにいたっては見たことあるヤツいないじゃんか。」
ジュン:「そこを管理してる動物たちと繋がれるってんならわかるけど、何がそんなに楽しいんだ?」
ジュンは心底不思議そうな顔でキラに問いかけます。
キラ:「ん~。最初はオレも不思議で仕方なかったんだけどさ。」
キラ:「リーナと一緒に印を集めてるうちに、なんとなくリーナが喜んでる感じがわかるんだよね。」
キラ:「なんていうのかな〜。気づけるかどうか?っていうか…」
キラ:「詳しく説明しろって言われると難しいんだけど…」
キラはなんと説明したものか?と頭を捻りながらジュンに言います。
ジュンはキラの説明に ”余計に意味がわからない…” と言った面持ちで難しい顔を浮かべました。
そんなやりとりをしていたジュンとキラでしたが、視界の隅に動く影をとらえ、自然とそちらの方に目を向けながら立ち上がりました。
~贈り物とお裾分け~
どうやらリーナとユリ・サクラが ”繋結印(きずなむすびのしるし)” を貰って帰ってきたようです。
リーナとユリ・サクラはしっぽをピンッっと立て、楽しそうにおしゃべりをしながら
ご機嫌な様子でなだらかな坂道をキラたちが日向ぼっこをしている草原に向けて登って来ます。
キラ:「リーナ、みんな、おかえり~♪」
キラはたまらず大きな声でリーナたちに声をかけます。
キラの声に反応してリーナたちは視線をむけると ”ただいま~♪” と言いながら坂道を駆け上がり、キラとジュンの元に駆け寄ります。
キラとジュンもリーナ達の方へ走り始めました。
サクラ:「わっ!?」
勢いよく駆け出したリーナ達でしたが、
坂の中腹あたり、後ちょっとでキラ達と合流というところでサクラが躓き転びそうになりました。
ジュン:「よっ!(…ふぅ)サクラちゃん大丈夫か?」
サクラ:「ジュンさんありがとうございます〜」
ユリ:「もう!ほんとドジなんだから!」
間一髪の所で、虎のジュンが鼻先を器用に使いサクラを受け止め安堵のため息を漏らします。
そして、ユリはそんなサクラを嗜めながら土埃をポンポンと払ってあげるのでした。
そんなどこかほっこりする微笑ましい光景を眺めながらリーナとキラは
リーナ:「キラ。ただいま♪」
キラ:「おかえり~♪」
そう言いい、頭をスリスリとこすり合わせてご挨拶をします。
リーナ:「ジュンも一緒だったのね♪」
リーナ:「ジュン、ただいま♪ここで何してたの?」
ジュン:「あぁ。おかえり♪ユリちゃんとサクラちゃんもおかえり。」
ジュン:「キラが暇だって言うから日向ぼっこに付き合ってたんだ。」
リーナ:「あら。そうだったの。ジュン、ありがとね♪」
ジュン:「いや。かまわないよ。それより、印は貰えたのか?」
リーナ:「えぇ♪もちろんよ♪」
サクラ:「ばっちり猫又神社の猫主様から肉球の印を貰って来ましたよ!!」
バンッ!!っと勢いよくジュンの前に印帳を見せたのは一番最年少のアメショのサクラでした。
そんなサクラに負けず劣らず、勢いよくジュンに印帳を見せながらユリが興奮冷めやらぬといった感じで力説します。
ユリ:「ユリのは猫主様の爪の跡も付いてるんですよ♪すごいでしょ~♪」
サクラ:「わたしのだって猫主様の肉球のシワがちゃんとくっきり写ってるんです!」
サクラ:「ほら!見てください!!ここです!ここっ!!」
ユリとサクラは鼻息荒く、身振り手振りを交えながらジュンに詰め寄ります。
そんなふたりに若干押され気味のジュンは苦笑いしつつふたりの印帳を覗き込みます。
ジュン:「へぇ〜。こんな感じに印をつけてくれるのか。」
ジュン:「ふたりとも印が貰えて良かったな♪」
ユリ&サクラ:「「はいっ♪♪」」
ユリとサクラは尻尾をピンと立て、ご機嫌顔でにんまりと笑います。
サクラ:「あっ!そうだ!キラさんの分もちゃんと貰ってきましたよ♪」
キラ:「ほんと?サクラ、ありがと〜」
ユリ:「そうそう!街まで来れない事情話したら猫主様がキラさんにってお守りもくれました♪」
そういうと、ユリは小さな帽子を被った緑色のどんぐりのお守りを大事そうに肉球の上に乗せ、キラに手渡します。
キラ:「うそ!?わぁ〜♪すっごくうれしい♪」
キラ:「ユリちゃん、サクラ、ほんとにありがと〜♪」
嬉しそうにどんぐりのお守りを受け取るキラに、楽しかった気持ちをお裾分け出来た気がしてユリとサクラはとっても満足気です。
リーナ:「ジュンにはこれをあげるわ♪」
そういうと、リーナは先端から赤→黄色→緑の順番に三色のグラデーションになった1枚の葉っぱをジュンに手渡しました。
ジュン:「えっ?オレにもいいのか?」
リーナ:「えぇ♪もちろんよ♪」
リーナ:「楽しい気持ちはみんなでお裾分け出来た方がもっと楽しいもの…♡」
リーナ:「だから貰ってくれると嬉しいわ♪」
ジュン:「そっか。ありがと♪これもお守りか?」
リーナ:「これは猫又神社の神様からの贈り物よ♪」
キラ&ジュン:「「えっ!?神様から!?」」
キラとジュンは目を見開き、心底驚いた顔でリーナを見つめます。
キラ:「神様からって…一体どういう事?」
ジュン:「リーナちゃんは神様に会ったことあるってのかよ!?」
キラはまさかと言う面持ちで、
ジュンはからかってるんじゃないか?と若干疑いの眼差しを向けながら矢継ぎ早にリーナに質問をします。
リーナ:「あら?信じられない?」
リーナ:「でも、これは確かに神様からの贈り物よ♪」
リーナ:「ね?ユリちゃん♪サクラちゃん♪」
ユリ:「はい♪間違いないですよ♪」
サクラ:「そうです♪そうです♪」
“ね〜♪”と言いながら、リーナ・ユリ・サクラはお互いの顔を見合わせて微笑みあいます。
あまりにリーナたちが楽しそうに言うものですから、
ジュンとキラはにわかには信じられないといった面持ちではあるものの
嘘を言ってるようにも思えず、どう言う事なのか?と頭をひねるばかりです。
そんなふたりの様子にリーナ達は何があったかを話し始めました。
~猫又神社(ねこまたじんじゃ)~
リーナ:「キラは知ってると思うけど…」
リーナ:「私は繋結印(きずなむすびのしるし)を貰いに行く時、その場所の木で少し休ませてもらうのね」
リーナ:「でも、神社や妖精の森でもそうだけど、どの木で休んでもいいってわけじゃないわ」
リーナ:「触れてはいけない木とか場所ってのもあるのよ」
そう前置きをして身振り手振りで話し始めます。
〜〜〜〜〜〜〜
猫又神社にて…
とある空き地の一角に注意して見ないと気づかない茂みの小道がございました。
そこは知るモノぞ知る、猫又神社の出入り口。
偶然、冒険心を出して寄り道してみるか、はたまた猫又神社の存在を知ってるモノから聞かなければ気づかぬまま素通りしてしまう。
そんな茂みの奥深くになんとも神々しく、ひっそりとしていて、威厳を感じさせる鳥居がお出迎えしてくれるのです。
ユリ:「わぁ~♡やっと着きましたね♪猫又神社♪」
サクラ:「なんか急にドキドキしてきました~」
リーナ:「ふふ♪ユリちゃん、サクラちゃん、少し落ち着きなさい♪」
リーナ:「さ、まずは手を洗ってご挨拶に行くわよ♪」
ユリ&サクラ:「「はぁ~い♪」」
ユリ・サクラ・リーナは楽しみにしていたのもあり、少しウキウキ気分が隠しきれない様子で猫又神社の中に入っていきます。
まずはキレイに肉球についた汚れを落とし、参拝の列に並びます。
ユリ:「やっぱり、結構たくさんの動物たちが来てるんですね~」
リーナ:「えぇ。ここはひっそりとした場所にあっても昔から愛され大切に守られてきてる場所だからね」
サクラ:「え!リーナさん猫又神社に来たことあるんですか!?」
リーナ:「えぇ。昔に一度だけね♪」
ユリ:「そうだったんですか~」
ユリはリーナの事で自分が知らない事があった事実にちょっとした不満顔をしてたかと思ったら、
次の瞬間にはまた一つ新しい事を知った喜び顔へと百面相のごとく切り替わり、
サクラは何故だか羨望の眼差しでリーナを見つめます。
そんなふたりに苦笑いを浮かべつつ、リーナは辺りをぐるりと見渡します。
神社の境内や参拝の列には、猫のみならず鳥・犬・キツネ・タヌキ・トカゲ・魚など
多種多様な生き物たちが訪れ、思い思いの時をゆったりと過ごしておりました。
リーナは、このゆったりとした時の中でさまざまな生き物たちが交流を持てるこの空間に来れたことに
ほんのりと胸の奥がぽかぽかする気持ちになり自然とほがらかな表情を浮かべます。
ふと、ユリとサクラの方にも目をやりますが、
ふたりとも楽しそうな表情を浮かべており
心の中でそっと ”ありがとうございます” と唱えるのでした。
ゆっくり、ゆっくりと参拝の列が進むにつれユリがこんな事を言い始めました。
~お供え物と好奇心~
ユリ:「そういえば…サクラとリーナさんお供物は何を持ってきました?」
神社や妖精の森の神様にご挨拶をする時に、
その場所に訪れたモノ達は思い思いの品を神様にお供えするのが通例でした。
毎回決まった品をお供えするモノ、
その土地の神様に合わせてお供えする品を変えるモノなど様々ですが、
大抵は神様が食せる食べ物や飲み物などを持ち寄る事が大半でした。
そんなわけですから、どんな品物を持ってきたのかユリは気になってしょうがない様子です。
サクラ:「私は、やっぱり猫又神さまですからお気に入りの鰹節にしました♪」
サクラ:「ユリさんは?」
ユリ:「ユリもお気に入りの煮干しを持ってきた!」
サクラ:「煮干しか~♪どうりでさっきからいい匂いがすると思いました~」
サクラはジュルリとよだれを拭うフリをしながらゴクリッと喉を鳴らします。
ユリはとっさに危機感を感じ、煮干しをサッと隠します。
ユリ:「一応言っておくけど…」
ユリ:「こ・れ・は!!猫又様へのお供えものだからね!!」
サクラ:「わ、わかってますよ~(汗)」
そんなふたりのやりとりにクスクスとリーナは笑います。
ユリ:「リーナさんは何を持ってきたんですか?」
リーナ:「ん?わたし?」
リーナ:「私はキラの分と2つ持ってきたんだけど…」
リーナ:「キラのはこれね。干し肉」
サクラ:「あっ!それ、キラさんの秘蔵の干し肉じゃないですか!」
リーナ:「あら、サクラちゃんよく知ってるわね。」
サクラ:「だって、前にそれ見てたらすごい勢いでキラさんに隠されましたもん!!」
ユリ:「それって…サクラがよだれ垂らしてたからじゃないの…?」
サクラ:「なっ!!よだれなんか垂らしたりしてないですよ!!」
サクラ:「ちょっと…お腹が鳴っただけで…」
サクラはごにょごにょと小声で言います。
サクラの食に対する熱望を知っているユリとリーナは
”そりゃ…よだれを垂らすより隠されるよな~…”
と思いましたが、グッと堪えて苦笑いでとどめるのでした。
そんなふたりの生暖かい眼差しにサクラは慌てて話をそらします。
サクラ:「リ、リーナさんのは?何持ってきたんですか?」
リーナ:「あ…そうだったわね。わたしのはコレよ。」
そう言って、リーナが見せたのはキレイな黄色のお花でした。
〜お知らせとお裾分け〜
ユリ:「え?お花ですか!?」
サクラ:「猫又様ってお花食べるんですか!?」
ふたりはほぼ同時にリーナに疑問を投げかけます。
リーナ:「えぇ。お花よ♪」
リーナ:「それと…わからないけど、お花は食べないんじゃないかしらね?」
リーナはニコニコしながらふたりの質問に順番に答えていきます。
ユリとサクラは不思議そうにお花を見つめて言います。
ユリ:「なんでお花にしたんですか?」
サクラ:「そうですよ!食べ物や飲み物がいいって聞きましたよ?」
リーナ:「ん~。何故って聞かれてもね~。」
リーナ:「お供え物はコレじゃなきゃダメってものでもないでしょ?」
リーナ:「気持ちをお供え物として猫又神さまに渡すのだから、食べ物や飲み物の方がいいって意見もあるけど私は今回お花を渡したかったのよ♪」
リーナ:「この花はね、キラが見つけて私にくれたお花の1つなの。」
リーナ:「お花を貰ったとき、とっても嬉しい気持ちになったわ。」
リーナ:「だから、うれしい気持ちのお裾分けと ”こんなお花が咲いてましたよ♪” ってお知らせをしようかなって思って。」
ユリ:「お知らせですか?」
リーナ:「えぇ♪だって、猫又様はこの猫又神社でいつも見守ってくださってるでしょ?」
リーナ:「なら、お花が見たくても中々見に行けないかもしれないじゃない?」
リーナ:「だから、感謝の気持ちを込めてお知らせとお裾分けよ♪」
リーナ:「それに、食べ物ばっかりあったら胃もたれしちゃいそうじゃない?」
リーナはペロリっと舌をだし、いたずらそうな笑みを浮かべて言います。
〜想像と葛藤〜
ユリとサクラは胃もたれを起こす猫又神さまを頭の中でモクモクと想像します。
猫又様のまわりには溢れんばかりの食べ物と飲み物の数々。
そんなお供物に囲まれた空間の真ん中には、
はち切れんばかりのまん丸のお腹をした猫又様がお腹を擦りながらお供物を眺めている様子。
”ちょっと…ありえそう…(汗)”
そんな事を思いながら慌てだします。
ユリ:「ユリも違うものにした方が良かったでしょうか?(汗)」
サクラ:「私も食べ物にしちゃいました~どうしよ~どっかにお花…(汗)」
あわあわと頭の上に広がった想像を両の手で振り払うジェスチャーをし、
オロオロと周辺を見渡し別のものを探す素振りをしながらリーナに問いかけます。
リーナ:「ユリちゃん、サクラちゃん、大丈夫よ。落ち着いてちょーだい。」
リーナ:「ごめんなさいね。変な想像をさせちゃったわね。」
リーナ:「でもね。ふたりがお供物を変える必要なんて全くないのよ。」
リーナ:「あなた達は猫又様が喜ぶだろうと思ってそのお供物を選んだのでしょう?」
リーナ:「なら、そのお供物で良いに決まってるじゃない♪」
ユリ:「で、でも…」
サクラ:「胃もたれなんて起こさせちゃったらバチが当たりそうで…」
リーナ:「バチを当てるなんて…そんなことあるわけないじゃない。」
リーナ:「さっきも言ったでしょ?気持ちをお供えするのよ?」
リーナ:「ユリちゃんとサクラちゃんは猫又様が美味しそうに食べる姿を想像してそのお供物を選んだのでしょう?」
リーナ:「私も同じように猫又様がお花を貰って喜んでくれる姿を想像して選んだに過ぎないわ。」
リーナ:「その純粋な気持ちが大切なんだと思うの。」
リーナ:「誰かに合わせるのではなく、あなた達自身の気持ちを渡すのが一番喜んでくれるんじゃないかな?って私は思うわ。」
リーナ:「だって、もしユリちゃんとサクラちゃんがあれやこれや悩んで送ってくれた物だったら私どんなものでもやっぱり嬉しいもの♪」
リーナ:「虫さんだけは正直ビックリしちゃうけどね…(苦笑)」
そう言って虫を持ってこられた時を思い出し、
若干冷や汗を垂らしながらも微笑み
”どうする?本当に変えたい?”
そんな問い掛けをしながらリーナはにっこりとまた笑みを浮かべ、コクンと小首をかしげてふたりの答えを待ちます。
ユリ:「…うん。そうですね!ユリやっぱり煮干しのままでいいです!」
サクラ:「私も鰹節大好きなので猫又様にも食べて貰いたいです♪」
リーナ:「ふふ♪えぇ。そうね。きっと喜んでくれると思うわ♪」
ユリ・サクラ・リーナはお互いの顔を見合わせ微笑み合います。
すると、何かを思いついた様にサクラが言いました。
〜不足感と感謝〜
サクラ:「あっ!せっかくならカリカリやちゅるちゅるも持ってくればよかったです~」
サクラ:「鰹節以外にも大好きなもの沢山あるのに…もっと持ってくれば良かった。」
サクラ:「そしたら、猫又様に沢山私の好きな物食べて喜んで貰えたのになぁ…」
サクラは両方の耳をペタンと折りたたみしょんぼりとした顔をします。
リーナ:「あらあら。サクラちゃん、そんな顔しないの。」
リーナ:「そんなに沢山じゃなくても猫又様はきっと喜んでくれると思うわよ。」
リーナ:「今日持ってきた1つに思いっきり気持ちを込めるだけでいいの。」
リーナ:「もし、他にも渡したいものがあるなら次きた時に渡せばいいじゃない?」
リーナ:「いま手元にあるものだけだと何か物足りない感じがするのであれば感謝の気持ちを乗せればいいと思うわ。」
サクラ:「感謝の気持ちですか?」
リーナ:「えぇ。そうよ。ちょっとした事だけどあるとないとじゃ全然変わると思うわ。」
リーナ:「”いつもありがとう” って気持ちを乗せるだけでもっと素敵な贈り物になるもの♪」
ユリ:「感謝の気持ちか…たしかにそうですよね。」
ユリ:「ユリ、いつもお願いばかりしてました…」
サクラ:「私もです…ちゃんと感謝も伝えないとですね!」
ユリ:「よし!サクラ!今日はありったけの感謝の気持ちも伝えようね♪」
サクラ:「はい♪ユリさんには負けないくらい伝えちゃいますよ~♪」
ユリ:「言ったわね~ユリだって負けないんだから~♪」
きゃっきゃっ♡と戯れあっていると
いよいよ参拝の順番が回ってきました。
リーナ達は、それぞれ思い思いのお供え物を
お供箱の上に乗せると2度お辞儀をし、
両手の肉球をポンポンっと合わせると猫又神さまに ”ご挨拶と感謝+お願い” をして
最後にお別れのお辞儀をしてから参拝の列を離れました。
~願い事と喧嘩~
サクラ:「ばっちり伝えられましたよ♪」
ユリ:「ユリも♪感謝もお願いもいっぱい、いっぱい伝えたんだから♪」
サクラ:「ユリさんどんなお願いごとしたんですか?」
ユリ:「えっとね…リーナさんともっとお出かけ出来ますように♪でしょ。」
ユリ:「それから…サキさんがシンさんともっと遊べますように♪でしょ。」
ユリ:「あと…子分のサクラが食べ過ぎでお腹壊しませんように♪転んで怪我しませんように♪でしょ。」
ユリ:「それから…リーナさんと…あと…リーナさんと…他にも…リーナさんと…」
サクラ:「も、もう結構です!」
サクラ:「…ってか、子分って…いつからユリさんの子分になったんですか!?」
ユリ:「ん?一番最年少なんだから子分じゃない?」
サクラ:「なっ!?私の師匠はリーナさんです!」
サクラ:「だからユリさんの子分じゃありません!」
ユリ:「そうなの?じゃあ…子分じゃなくて何にする?」
サクラ:「えっ!?…えっと。ラ、ライバルとか…?」
ユリ:「ライバル…?へぇ~。ライバルって事は…ユリとリーナさんを取り合うって事ね。」
ユリ:「いい度胸じゃない?どこからでもかかって来なさい!」
ユリは目を星のように光らせニヤリと笑いながら鋭い爪をシャキンッ☆と出すとジリジリとサクラに詰め寄ります。
サクラは冷や汗を垂らしながらもシッポを2倍に膨らませ迎え撃とうとしています。
その時、すぐそばから静かでありながらしっかりとふたりの耳に届く声が響きました。
リーナ:「ユリちゃん…?サクラちゃん…?」
にっこりと静かな冷笑を携えながらふたりの名を呼んだのは紛れもなくリーナです。
”しまった…” と思ったふたりは慌てて姿勢を正し、すぐさま別の話題に切り替えます。
サクラ:「で、でも、キラさんが来れなかったのは残念でしたね~」
ユリ:「そ、そうだよね。何か方法があれば良かったんですけど…」
リーナ:「そうね。キラが来れなかった分、わたし達が代わりに繋いであげましょ♪」
リーナ:「さ、早く来ないと置いていっちゃうわよ♪」
ユリとサクラはあんなに迫力のある笑顔を
なんとか切り抜けた事への安堵感でふぅ~と深い息を吐き出し胸を撫で下ろすのでした。
〜年上と年下〜
ユリ:「そういえばリーナさんはなんてお願いしたんですか?」
繋結印(きずなむすびのしるし)を貰える場所にトコトコと歩みを進めていたリーナ達でしたが、
早く聞きたくてしょうがなかったと言わんばかりにユリがリーナに質問をします。
リーナ:「わたし?そうね、キラと私の大好きな可愛い妹たちや仲間たちが笑顔で幸せいっぱいでいられますように…」
リーナ:「それから…神社の木で少し休ませて欲しい事とダメな場所は何か合図をして教えてくださいってお願いしたわ」
ユリ:「可愛い妹たちってユリの事ですか?」
ユリはしっぽをぷるぷる震わせながら目を♡の形にしてリーナに問いかけます。
そんなユリとリーナの間に割って入るようにしてユリを押しのけ、質問を被せてくるのはアメショのサクラです。
サクラ:「もちろん私の事ですよね♪師匠♪」
ユリ:「ちょっとサクラ!何するのよ!」
ユリ:「ユリが先に質問してるのに!」
サクラ:「ふ~んだ。別にどっちが先とか関係ないですもん!」
ユリ:「なんですって!最年少のくせに~」
ユリ:「年上を敬いなさいよ!」
サクラ:「聞こえませ~ん。」
サクラ:「そんな事いうユリさんにはわたしが何お願いしたか教えてあげませんからね~」
ユリ:「別にいいわよ!どうせ、サクラがお願いすることなんて食べ物のことでしょ!」
サクラ:「なっ!失礼な!食べ物のお願いは3つしかしてません!!」
ユリ:「3つはしてるんだ…(笑)」
ニヤニヤと悪い笑みをするユリにムッとしながらユリを見るサクラ。
サクラ:「年上なら年上らしく年下に譲ってくれてもいいんじゃないですかぁ?」
ユリ:「なんですって!?サクラのくせに生意気~!!」
キィー!っと顔を赤くさせて怒るユリにどこ吹く風のサクラの言い争いはどんどん白熱していきます。
そんなふたりの様子を見ていたリーナはいいました。
リーナ:「なるほどね。たしかにそれはいいわね♪」
ユリとサクラはリーナが何をいいと言い出したのかがわからず頭の上に「???」を浮かべます。
リーナ:「せっかく猫又神社に来たのに言い争いばっかりしてるふたりの質問なんて聞こえませ~ん♪」
リーナ:「年上権限で何がいけなかったか反省して仲直りするまでふたりとは別行動にします♪」
ユリ&サクラ「「 え”…!? 」」
リーナ:「年下のふたりは年上の私の意見には逆らえないものね?」
リーナ:「そうでしょ?ユリちゃん♪」
ユリ:「そ、それは…」
リーナ:「それに年上らしくちゃんと年下にゆずらないとだものね。」
リーナ:「さぁどうぞ。ユリちゃんは気にせずサクラちゃんから謝っていいのよ?」
サクラ:「うぅ…」
リーナ:「それじゃ、終わったら呼んでちょーだい。先に印貰いにいってるわね~」
そう言い残すとリーナはスタスタと先に歩いて行ってしまいました。
~和解と合意~
ユリとサクラはリーナに置いていかれてしまったショックと言い争いをした気まずさから
しばらくの間、無言の時を過ごしておりましたが
さすがにこのままではダメだと思い直しどちらからともなく ぽつり、ぽつりと話始めます。
ユリ:「その…年上風を吹かせたり、意地悪な言い方をして悪かったわ…」
ユリ:「……………」
サクラ:「わ、私も強引に押しのけたり、生意気な言い方をしてすみませんでした…」
サクラ:「……………」
サクラ:「その…ユリさんがリーナさんばっかりだったから私もいるのにって思って…」
サクラ:「……………」
ユリ:「…べ、別に!サクラをハブこうとしたわけじゃないわよ…」
ユリ:「……………」
サクラ:「でも…私のお願いは興味ないって…」
ユリ:「そ、それは…」
サクラ:「私もユリさんが元気でいれますように…ってちゃんとお願いしたのに…」
サクラは目を潤ませながら言います。
ユリ:「だ、だって…」
ユリ:「サクラがライバルって言うから!」
サクラ:「…えっ?」
ユリ:「ユリだって…やっと妹が出来たって…」
ユリ:「リーナさん達ほどしっかりしてないけど、お姉ちゃんとして頑張ろうって思ってたのに…」
ユリ:「なのに!サクラがライバルだって言うから…リーナさんだけって言うからっ!!」
ユリ:「だから…お姉ちゃんとすら思われてないって思ったらちょっとムキになっちゃって…」
サクラ:「!?!?」
サクラ:「だ、だって!ユリさん子分だって言ったじゃないですか!」
ユリ:「妹分なんだから子分じゃない!」
ユリ:「同じでしょ!わかりなさいよ!」
サクラ:「どこが同じなんですかっ!」
サクラ:「わかるわけないでしょっ!」
ユリ:「なんでわかんないのよっ!」
サクラ:「わからないものはわからないからですっ!」
その時、カラン、カランっと鈴の音が鳴りました。
ユリ&サクラ:「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
ユリとサクラは最初こそ話しては黙りを繰り返してましたが徐々に白熱していき、
息も切れ切れになるほどお互いの気持ちをありったけぶつけ合いました。
そして…やっと一息ついた所でお互いの顔を見合わせ声をあげて笑い始めました。
ユリ:「(クスクス)ユリ達何やってるんだろ−ね。」
サクラ:「(クスクス)ほんとですね。」
ユリ:「サクラごめん。ほんと悪かったわ。」
サクラ:「私こそ、ほんとすみませんでした。」
サクラ:「ユリさんはライバルじゃなくてお姉ちゃんです。」
ユリ:「いや!いいよ。ライバルのままで」
サクラ:「え?なんでですか?(汗)」
サクラ:「私がライバルって言ったから、もうお姉ちゃんになってくれないんですか?(汗)」
ユリ:「いや、そうじゃなくて…」
ユリ:「ユリは “姉貴分 兼 ライバル” って事でいんじゃない?(笑)」
サクラ:「姉貴分 兼 ライバル…?」
ユリ:「そっ。ユリ達にはそれくらいの方がちょうど良くない?(笑)」
サクラ:「…ぷっ。あはは〜確かにそうですね♪」
サクラ:「じゃあ、私は “妹分 兼 ライバル” ってことで♪」
ユリ:「うん♪じゃ、改めてよろしくね♪妹分のサクラ♪」
サクラ:「こちらこそよろしくです♪姉貴分のユリさん♪」
そう言いながらユリとサクラはしっかりとしっぽを絡め、お互いの頭を擦り合わせます。
どうやら仲直りに成功したようですね。きっと猫又神社の神様も一安心したことでしょう。
ユリとサクラは先程までの険悪な空気が嘘のように晴れ晴れとした表情でリーナを追いかけ始めます。
すると繋結印所の前に黒猫の姿を発見しました。
ユリ&サクラ「「リーナさ~ん!」」
リーナはゆっくりと声のした方へ振り向きます。
~鼓動と贈り物~
リーナ:「あら?やっと来たのね♪」
リーナはそう言って微笑みます。
ユリ:「お待たせしちゃってすみません!」
サクラ:「ごめんなさい!」
ユリとサクラは口々に謝罪の言葉を口にします。
リーナ:「いいのよ。ちゃんといい顔になって戻ってきたのだから。」
リーナ:「さぁ。印(しるし)を貰いに行きましょ♪」
ユリ:「え?リーナさんもう貰ったんじゃなかったんですか!?」
サクラ:「待っててくれたんですか!?」
ユリとサクラはビックリした顔でリーナを見つめます。
リーナ:「当たり前じゃない。私だけ貰っても意味がないもの。」
リーナ:「今日は皆んなで貰いに来たのだから♪」
リーナ:「さっ。ふたりとも行くわよ♪だいぶ並んでるから早く列に並ばないとね♪」
ユリとサクラはなんとも言えない暖かさがこみ上げてきて口の辺りがムズムズとしました。
心なしか足取りも軽やかにスキップするようにリーナの跡を付いていきます。
地面の砂利が足取りに合わせてジャッジャッジャッ♪とまるで歌っているように鳴り響きます。
もう少しで繋結印(きずなむすびのしるし)の受付の前に出来た列に並ぶという時でした。
どこからともなく1匹のスズメバチがリーナ達の方に向かって飛んできました。
ユリ:「あっ!スズメバチです!!」
リーナ:「まぁ。今の時期は過敏になってる時だから近づいちゃダメよ。」
サクラ:「で、で、で、でも!!こっちに一直線に向かってきてますっ!!」
リーナ:「…えっ!?」
ユリ:「ガッツリ見られてる気しかしません~(泣)」
リーナ:「そんなはずっ…ほんとだわ!」
リーナ:「取り敢えず、一旦少し離れましょう!」
ユリ&サクラ「「…はいっ!!(汗)」」
リーナ・ユリ・サクラは足早に列を離れると大きな御神木の前まで移動しました。
スズメバチはと言うとしばらく滞在したのちどこかへ飛んでいきます。
サクラ:「行ったみたいですけど…どうします?」
ユリ:「すぐ戻るのはちょっと怖いよね…」
リーナ:「そうね。せっかくだしこの御神木で少し休ませて貰いましょうか♪」
サクラ:「そうですね♪まだ列もだいぶ長いですしそうしましょ♪」
そう言うと、リーナ達は御神木の根本に根っこを避けるような形で丸まって休み始めます。
ユリ:「でも、なんでこっちに一直線に向かって来たんだろ?」
サクラ:「ほんとですよね~甘い匂いでもしたんでしょうか?」
ユリ:「あっ!リーナさんのお花!」
リーナ:「ん~。でもアレはもうお供えしちゃったわよ?」
リーナ:「まだ香りが残ってたりしたのかしら?」
サクラはリーナに近づくとスンスンと匂いを確認しますが、特に香りが残っている感じはしません。
サクラ:「ん~。特に残ってる感じはありませんね。」
ユリ:「ならユリは?」
今度はユリに近づくとスンスンと匂いを確認します。
サクラ:「…あっ!」
ユリ:「なに!?香りしたの!?」
サクラ:「しました!!」
ユリ:「えっ?うそっ!?どこどこ?」
サクラ:「手から美味しそうな煮干しの香りがしっかりしますぅ…♡」
ユリ:「…………サクラ…(ギロリ)」
ユリはシッポをブンブンと大きく振りながらサクラを横目でギロリと捕らえます。
サクラ:「わわわ…でも、美味しそうな匂いがするってことで!」
リーナ:「サクラちゃん…さすがに煮干しの香りには寄って来ないんじゃないかしら…(苦笑)」
サクラ:「うっ…そうですね…(汗)」
ユリは煮干しの匂いがついていると言われたのが気になったのか先程から手をペロペロと念入りにお掃除し始めました。
すると御神木の枝葉が風に揺られサワサワと音を立てて揺れます。
葉音につられ一斉に上を見上げたリーナ達でしたが、心地よい風に自然と目を閉じます。
サワサワという葉音がより安らぎ感を膨らませ、ゆったりとした時間を奏でます。
リーナ:「なんだか少し眠くなって来ちゃったわね。。」
ユリ:「ほんとですね。。」
サクラ:「少しだけお昼寝しましょうか。。」
そう言うと、それぞれ御神木の幹に身体を預けるような形でお昼寝を始めます。
しばらくするとリーナが ”あら…?” っと声をあげました。
ユリ:「どうかしました?」
耳をピタッと御神木の幹につけていたリーナが言いました。
リーナ:「御神木の鼓動が聞こえるわ…」
ユリ&サクラ:「「えっ?」」
まさか…?と思いつつ、ユリとサクラも耳をつけて聞いてみます。
ユリ:「あっ!ほんとだ!ほんとに聞こえる!!」
サクラ:「え?え?え!?なんで!?」
たしかに御神木の幹からは鼓動が聞こえます。
流れるように…だけど、どこか力強いその鼓動はまさに御神木の生命力を表すかのようです。
サクラ:「すごいですね~♪いつまででも聞いてられます~♪」
ユリ:「うん!なんかすっごく安心する♪」
リーナ:「ほんとね~♪なんて力強いのかしら…」
リーナ達は御神木の鼓動を聞きながらとても心地よい気分になりました。
そんな時、またも風に枝葉がサワサワと揺られ一枚の葉がヒラヒラとリーナの元へ舞い降りてきました。
その葉は、根本から緑→黄色→赤と徐々に色が移り変わっており全く違う色にも関わらずとても調和のとれたキレイな一枚の葉でした。
リーナは自分の元へ落ちてきたその葉を手に取るとマジマジと見つめます。
サクラ:「わぁ~♪すっごくキレイですね♪素敵なお土産ができましたね♪」
ユリ:「なんか、まるでリーナさんめがけて落ちてきたみたいだったもんね♪」
その何ともキレイな葉を見ながらユリとサクラが言います。
するとリーナが少し微笑みながらこんな事を言いだしました。
リーナ:「なんかまるでわたし達みたいね♪」
ユリ:「???」
サクラ:「???」
リーナ:「だって…この葉、全然違う3色なのにすっごくまとまってるじゃない?」
リーナ:「私もユリちゃんもサクラちゃんも全然性格も好みも猫種だって違うけど、とっても仲良しだもの。」
リーナ:「ね?まるでわたし達みたいでしょ?」
そう言ってリーナはどこか嬉しそうに微笑みます。
ユリ:「はい♪きっとそうですよ!ユリ達の葉です♪」
ユリ:「ユリ達もこの葉っぱみたいにとっても仲良しですもん♪」
サクラ:「私もそう思います♪」
サクラ:「あっ!もしかして…これってお花のお返しなんじゃないですか?」
リーナ:「お花のお返し?」
サクラ:「はい♪リーナさんのお花のお返しに猫又様がこの葉っぱを送ってくれたんじゃないでしょうか?」
ユリ:「たしかに!この木、御神木だしね♪」
ユリ:「猫又様からの贈り物ですよ!きっと♪」
リーナ:「ふふ♪そうかもしれないわね♪」
リーナはそっと ”ありがとうございます” とつぶやくと大事そうに葉をしまいます。
リーナ:「さて、そろそろ印(しるし)を貰いに行きましょうか。」
ユリ:「そうですね!行きましょう♪」
サクラ:「ましょ~♪」
リーナ達は改めて御神木にお礼を伝えると繋結印所へ向けて歩きはじめます。
~お返事と印(しるし)~
ふと、サクラが何かを見つけて言いました。
サクラ:「あっ♪あんな所にも不思議な形の木がある!」
その木は幹がツルツルで細いのに枝葉はまるでキノコの傘のようにイキイキと生い茂っておりました。
日差しを遮ってくれるような立派な枝葉の下は、なんとも涼しげでお昼寝には最適そうに思えました。
サクラ:「印を貰ったら今度はあの木の下でお昼寝しませんか?」
ユリ:「いいね♪さすがサクラ♪いい所見つけたじゃん♪」
サクラ:「へへへ~♪」
サクラはちょっと得意げです。
ユリ:「ね?ね?ちょっとだけ先に行ってみない?」
好奇心盛んなユリは素敵なお昼寝処に興味津々です。
リーナ:「えぇ♪行ってみましょうか♪」
ユリ:「やったー♡」
ところが…キノコのような木に向かおうと歩みを進め始めた矢先、
どこからとも無くまたもスズメバチがやってきたのです。
ユリ:「きゃっ!またスズメバチだ!(汗)」
リーナ:「ユリちゃん!ゆっくり離れて!」
サクラ:「わぁ~ん。なんでまたこっちに来るんですか~(泣)」
リーナ達はそっと木から離れ距離をとります。
スズメバチはキノコのような木の前に陣取って、ジーッとリーナ達の方を見据え、
まったく動く気配がありません。
サクラ:「これじゃ…あの木の下でお昼寝は難しそうですね…」
ユリ:「だね…あ~あ。なんでこのタイミングで戻って来るのかな~(泣)」
しょんぼりとしっぽを垂らしながら、木の下でのお昼寝を諦め
トボトボと印(しるし)を貰いに行くことにしたようです。
リーナ:「……………あっ!!」
突然、リーナが大きな声をあげ驚いたふたりはリーナの方に向き直ります。
リーナ:「きっとこれお返事なのよ!」
リーナ:「そうよ。そうなんだわ♪」
ユリ:「えっ?お返事?」
サクラ:「なんのお返事ですか?」
ユリとサクラはリーナが言い出した “お返事” がなんのことか分からず首を傾げます。
リーナ:「さっきのスズメバチよ!」
リーナ:「ほらっ!私がしたお願い覚えてる?」
ユリ:「リーナさんのお願い…?…あっ!」
ユリ:「ひょっとして木のやつですか!?」
リーナ:「そうそう♡」
サクラ:「ってことは…さっきの木は触っちゃダメな木だったって事ですか?」
リーナ:「たぶんそうなんじゃないかしら♪」
ユリ:「えっと。なら、最初にスズメバチが現れたのは?」
リーナ:「まだ列も長かったし、”先にこっちで休みなさい” って案内してくれたのだと思うわ♪」
サクラ:「確かに…お陰でゆっくり休めましたし、お土産まで頂けましたもんね♪」
ユリ:「そっか!なら、今はちょうどいいタイミングって事ね♪」
リーナ:「そうね♪せっかく良いタイミングを教えてもらったんだもの」
リーナ:「さっ♪ふたりとも早く向かいましょ♪」
サクラ:「はい♪」
ユリ:「行こう♪行こう♪」
ユリとリーナ・サクラ達は、さっきまでのモヤモヤがまるで腑に落ちスッキリした表情で繋結印所へ向かいます。
受付の前は、先程まであれだけ行列をなしていたとは思えないほどガランとし
リーナ達はすんなりと印(しるし)を貰う事が出来ました。
リーナ:「ほらね♪やっぱりお返事だったのよ♪」
ユリ:「ほんとですね♪ベストタイミングです♪」
サクラ:「キラさんのもバッチリ貰えましたし、全部手書きですよ♪」
リーナ達は、キラの分もあるので並んでいる場合はあらかじめ準備されてる書き置きにしようと思っていました。
ところが、空いてる時間に来れた事もあり全員分を手書きで書いてもらう事が出来たのです。
ユリもサクラもマジマジと印(しるし)を眺めてはにんまり顔です。
すると、印(しるし)を授けてくれた猫主さまがおっしゃいました。
猫主:「4つあると言うことは、ひとり来れなかった子がいるのかい?」
リーナ:「えぇ。そうなんです。」
リーナ:「大きなライオンの姿なので街中に来るとビックリさせちゃうかもしれないからって」
猫主:「そうかい。そうかい。それは残念だったね…」
猫主:「なら、そのお友達にこれを持って行っておやりなさい。」
そう言うと、猫主様はどんぐりで出来た小さなお守りを渡してくれました。
リーナ:「えっ?頂いてしまっていいんですか!?」
猫主:「いいよ。その子は周りを気づかっていまお留守番してる優しい子みたいだからね。」
猫主:「きっと。猫又神様もそう思ったからこの時間に君たちを寄越したのだろう。」
ユリ:「えっ?どういうことですか?」
猫主:「このお守りは手作りで何個もあるものじゃないからね。」
猫主:「いま渡した1つで最後だ。」
猫主:「今日はもう他に来るモノもいないだろう。」
猫主:「だから、これはその子に渡しておやり」
リーナ:「そうですか…ありがとうございます♡」
リーナは嬉しそうにはにかみながら肉球の上に乗せてもらった小さなお守りを大事そうに包み込みます。
ユリ:「空いてる時間の案内だけじゃなく、これもお返事の1つだったんですね♪」
サクラ:「ほんとですね♪なんかすっごく幸せな気分です♪」
リーナ:「ほんとね。とってもあったかい気持ちだわ…♪」
リーナ達は、示し合わせたわけでもなく自然と目を瞑り、
それぞれの心の中で猫又様への心からの”ありがとう”を伝えるのでした。
そして、猫主様にも改めてお礼を伝えると帰路につくため鳥居に向かって進み出します。
神社の鳥居を抜けるか抜けないかというその時、
ビューっ!!と一陣の風が吹き抜けリーナ達は振り返ります。
すると、社の後ろの林の木は揺れていないのに林から少し飛び出た笹の木だけが風になびき左右にユッサユッサと揺れておりました。
動くモノを捉えるのが得意な猫の習性で自然と笹の木に視線が集中します。
まるで猫又神様がリーナ達に手を振っているようなゆったりとそして軽やかなその動作にリーナ達は無意識に微笑みながら手を振りかえします。
そして、同時に振り返した事がわかりお互いの顔を見合わせながら楽しそうに笑い合い、
鳥居をくぐり神社を後にするのでした。
~繋がりと循環~
リーナ:「…って事があったのよ♪」
キラ:「なるほどね。だから贈り物か…♪」
ジュン:「…う〜ん。」
リーナ達の説明を聞いていたキラとジュンでしたが、キラはどこか納得したような表情を浮かべジュンはまだどこか納得いかないような表情をしておりました。
ジュン:「こう言っちゃ悪いが…偶然な気もするんだが。」
ジュン:「それにだ、もし神さんからの贈り物なら尚更オレが貰ったらダメじゃないか?」
ジュンは頭の後ろを掻きながら少し気まずそうに言います。
リーナ:「あら?信じられない?」
リーナはどこか楽しげに言います。
リーナ:「それと安心して♪」
リーナ:「これはジュンへの贈り物なのだと思うわ。」
ジュン:「えっ?俺への贈り物?」
リーナ:「えぇ♪だって、来れなかったキラにお土産を準備してくれる優しい神様なのよ♪」
リーナ:「きっと猫又様にはジュンも一緒にいる事がわかってて、ジュンにも用意してくれたのだと思うわ♪」
ジュン:「いやいや。だって俺はお供え物すら渡してないのに…それは有り得ないだろ?」
リーナ:「あら?でも、キラと一緒に猫又神社のお話をしてたのでしょ?」
リーナ:「なら、猫又神社の神様なのだから聞いてた事だってありえるじゃない?」
リーナはクスリと笑いながらジュンに言いました。
ジュンは、仮にリーナの言う事が本当だとしてもそんな貴重な物…
ましてやリーナ達をイメージした贈り物を本当に自分が貰ってしまっても良いのか?
難しい顔をしながら悩んでいる様子です。
そんなジュンにリーナは続けて言いました。
リーナ:「それにね。私、幸せな事や楽しかった事って分け合った方がより楽しいと思うのよ。」
リーナ:「私もユリちゃんもサクラちゃんも猫又神社でとっても楽しく居心地の良い時間を過ごせたわ♪」
ユリ:「はい♪とっても楽しかったです♪」
サクラ:「もう。ほんと、帰る間際までとっても素敵な時間を過ごせましたよね♪」
リーナ:「ねっ?十分過ぎるくらい幸せを分けてもらったのよ。」
リーナ:「だから、その沢山分けてもらった楽しかった気持ちを独り占めするんじゃなくて」
リーナ:「今度は私がジュンにお裾分けするって感じかしらね♪」
リーナ:「分け合える仲間がいるって事も私にとってはとっても幸せな事なのよ…♡」
リーナ:「だから…ジュンが嫌で無いのであれば受け取ってくれると私も嬉しいわ♪」
そう言い、曇りの無い笑顔でジュンに微笑みかけます。
ジュン:「まぁ。そういう事なら…ありがたく頂戴するよ♪ありがとな!」
ジュンは少し気恥ずかしそうにしつつも分け合ったその幸せのカケラを大きなシマ柄の手で大事そうに包み込みます。
リーナ「どういたしまして♪」
みんなも分け合えたら喜びを噛み締めながらぽかぽかと暖かな気持ちで満たされたように穏やかな笑みを浮かべます。
そんな、どこかほっこりとする空間をまるで包み込むように春の心地のいい風が坂の上から吹いて来ました。
みな、自然と風の吹く坂の上に視線を向け心地の良いひとときを体で感じるのでした。
そして、しばらく堪能したのちリーナがふと素朴な疑問を投げかけました。
〜気づきと成就〜
リーナ:「そういえば…キラ?よく私たちが戻ってきたのわかったわね?」
キラ:「…え?だって影が見えたから…ねぇ?そうだよね?ジュン。」
ジュン:「あぁ。そうだな。姿が見えたからオレらも出迎えようと思ってな。」
ユリ:「え?影がですか…??」
リーナ:「…………」
サクラ:「そうだったんですね〜。でも、おかげで助かりましたよ〜。」
キラ:「たしかに。サクラはジュンが居なかったら危うく顔からズシャーってなってたかもしれないもんね〜♪」
サクラ:「ほんとですよ!危機一髪でした~。ジュンさん。ほんと感謝です♪」
ジュン:「いや。いいよ!間に合って良かったな♪」
ジュンとサクラ、キラの3人が先ほどの話で盛り上がってる最中、リーナとユリだけが何やら話し込み何かを確信してるようでした。
ユリ:「リーナさんもやっぱそう思います?」
リーナ:「えぇ♪きっとそうね♪」
ユリ:「やっぱそうですよね♪」
何やら楽しげにふたりで納得し合ってるその様子にキラ・ジュン・サクラは不思議そうに尋ねます。
キラ:「なにがやっぱそうなの?」
ジュン:「なんだ?何か発見でもしたのか?」
サクラ:「ふたりだけで内緒話ずるいですぅ〜」
リーナ:「ふふ♪違うのよ♪」
リーナ:「どうやら、キラとジュンの方が先に神様の姿を目撃してたみたいだからおかしくって♪」
「「「えっ!?」」」
ユリ:「ホントですよ。先に会えちゃうなんていいな〜♪」
ユリ:「それに、サクラ!ジュンさんだけじゃなくユリにも感謝してほしいくらいだわ♪」
唐突なその発言に驚きの表情を浮かべるキラ・ジュン・サクラをよそに
リーナはクスクスとおかしそうに笑いユリは両の手をくの字に曲げ腰のあたりにつけながら、少しからかう様な茶目っけたっぷりな笑みを浮かべながら話します。
サクラ:「え?え?え?どーゆう事ですか!?」
混乱全開で問いただすサクラの後ろで何を言われてるのか分からないと言った困惑した表情を浮かべ、お互いの顔を見合わせるジュンとキラ。
そんな3人にリーナはゆっくりと話始めます。
リーナ:「ねぇ?キラ?ジュン?もう一度、聞くわね?」
リーナ:「あなた達、なんで私たちが戻ってきたのわかったの?」
キラ:「え?だから、影が見えたって…?」
リーナ:「そうよね。影が見えたのだものね。その影が見えた所どこらへんだったか覚えてる?」
ジュン:「そりゃ、さっきまでいた所だから覚えてるが…それがどーしたんだ?」
リーナ:「いえね。その場所がどこなのか連れてってほしいなって思って♪ユリちゃんは…」
ユリ:「おっけいです♪」
ユリはリーナとアイコンタクトを取り、元気良く返事をすると坂の下に向かって走って行ってしまいました。
なぜ急にリーナがそんな事を言い出したのか?
ユリは何処に向かったのか?
訳がわからず、戸惑う3人でしたがリーナに急かされるようにして影を見た場所へと戻ります。
キラ:「えっと…着いたけど…?」
リーナ:「そうなの。ここね。ここでお昼寝してて影を見たの?」
ジュン:「あぁ。リーナちゃん達が見える前まではここで昼寝しながらキラと話してたからな。」
サクラ:「リーナさん。どうゆう事なんですか?私にも分かるように説明してくださいよ〜。」
サクラは好奇心が抑えきれないと言うように早くどうゆう事なのか聞きたくて仕方がないようです。
リーナ:「いえね。いま、ユリちゃんに私たちがいた場所まで戻って貰ってるんだけど…」
リーナ:「キラ、ジュン、あなた達ユリちゃんの姿見える?」
ジュン:「え?あぁ。普通に見えるが…?」
サクラ:「え?見えるんですか?私、ユリさんの姿見えません(汗)」
キラ:「あぁ。サクラ達の位置からだとちょっと難しいかもね。」
キラ:「オレら身体は大きい方だからもう少し下まで見えるんだよ。」
サクラ:「そうなんですね。いいな〜」
ジュン:「なら、オレの背中に乗ってみるか?」
サクラ:「え!?良いんですか!?!?」
サクラはしっぽをプルプルさせながら興奮した面持ちでジュンの背中に飛び乗ります。
サクラ:「わぁ〜♡ホントだー!ユリさん見える!ユリさーーん!!」
サクラはジュンの背中越しブンブンと手を振ります。ユリはサクラの声を聞き手を振り返すとこちらに向かって走り出しました。
キラ:「ユリちゃん戻ってくるみたいだよ?」
リーナ:「えぇ♪もう確認したのがわかったから戻って来てるのよ♪」
ジュン:「それで?リーナちゃん。」
ジュン:「結局、神さんを見たってのと影を見た場所とどー関係があるんだい?」
キラ:「うん。オレもそれ気になる。」
サクラ:「私もです!早く種明かししてくださいよ〜。」
クイズの答えを早く知りたいとでも言うような少し好奇心に満ちたキラキラした目線や向けてくる3人に
リーナはおかしさを堪えつつ ”ユリちゃんが戻ってきてからね♪” と中々教えてくれません。
おあずけを食らった3人はソワソワとしながらユリの帰りを待つものの待ちきれないと言うように鼻をヒクヒクさせたり、耳としっぽが忙しなく動き続けています。
そうこうしているうちにユリが息を切らせながら戻って来ました。
ユリ:「つ、疲れました〜。全力疾走つらい…(汗)」
リーナ:「ユリちゃんお疲れ様♪」
ふぅふぅと肩で息をするユリの背中をリーナが優しくさすります。
ジュン:「お疲れさん。ちょっと待ってろ。」
そう言ってジュンはどこかに駆けて行き、ものの数分でどこからともなく新鮮なお水を持ってきて来れました。
ユリはジュンにお礼を言うや否や物凄い勢いで水を飲みやっと一息ついたようです。
リーナ:「さて。ユリちゃんも戻ってきた事だし、さっきの続きだけど…」
リーナ:「キラとジュンが見た影って私たちじゃなく、猫又様の姿だったんだと思うわ♪」
キラ:「え?どうゆう事?」
ユリ:「やっぱりそうでした?」
ジュン:「なんでそーなんだ?」
リーナ:「えぇ。確認したから間違いないと思う♪」
ユリ:「やっぱそーだったかー♡」
サクラ:「ちょっと!ちょっと!ふたりだけで分かり合わないで私たちにも教えてくださいよ〜!!」
ユリ:「ごめん。ごめん(笑)予想が当たってたのがわかってついつい興奮しちゃって♪」
リーナ:「ふふ♪ごめんなさいね♪」
サクラ:「もう!いいから早く教えてください!!」
興奮するサクラを宥めつつリーナが話し始めます。
リーナ:「えっとね。キラとジュンが私たちの姿を見れるはずがないのよ。」
キラ:「え?なんで?普通にユリの姿も見えてただろ?」
ジュン:「そうだぜ?リーナちゃん。さっきもキラが言ってたがリーナちゃん達の位置からは見えなくてもオレらの位置からなら普通に見えたぞ?」
ジュン:「サクラちゃんだってオレの背中に乗ったら見えただろ?」
サクラ:「はい!バッチリ見えました!」
ジュン:「な?だから影は間違いなくリーナちゃん達だったと思うんだがな。」
ジュン:「残念だけど…神さんを見た事には繋がらないと思うぞ?」
リーナ:「ならキラとジュンにもう一つ質問があるのだけど…」
ジュン:「お?なんだ?」
キラ:「なになに?」
リーナ:「あなた達、立ちながらお昼寝してたの?」
「「…えっ?」」
サクラ:「あぁ〜〜〜!!!」
リーナ:「だってそうでしょ?お昼寝してたのなら今の私達と同じくらいの目線になるはずじゃない?」
意味がわかり叫ぶサクラに苦笑いを浮かべつつ説明をするリーナに続くようにユリが補足を付け加えます。
ユリ:「さっき、猫又神社で私が願った願い事の話覚えてます?」
ユリ:「ユリ、猫又様にサクラが転ばないように!って願ってたんですよ。」
サクラ:「あぁ〜〜〜!!!」
またもや絶叫するサクラにユリも苦笑いを浮かべつつ説明を続けます。
ユリ:「見える位置じゃないのに影が見えた事によってキラさんもジュンさんもユリ達の方に向かってきてくれたんですよね?」
リーナ:「ちょうどあの時、”ただ登ると大変だから追いかけっこでもしながら登ろうか?” って話してた所だったのよ。」
サクラ:「そーです!そーです!」
ユリ:「それで、ジュンさん達が間に合ってなかったらサクラはコケてたわけですし…」
リーナ:「全体的に見ても私たちを見たってよりは猫又様を見たんじゃないかな?ってユリちゃんと話して実験してみたわけよ。」
サクラ:「そーです!そーです!間違い無いです!!」
ユリ:「ちょっと。サクラ!いい加減、落ち着きなさいよ(汗)」
サクラ:「はいっ!!落ち着きますっ!!!」
しっぽを2倍に膨らませ興奮状態にあるサクラをユリが落ちかせます。
キラとジュンはにわかには信じられないものの確かに影を見たから立ち上がった事を思い出しお互いの顔を見合わせます。
リーナ:「ちなみにその時、猫又神社の話をしてたのでしょ?どんな話をしてたの?」
ジュン:「えっと…たしか…?」
キラ:「あぁ!ジュンに繋がりの話をしてた!気づくのをどう伝えたら伝わるかを悩んでた時だ!」
リーナ:「なるほどね♪なら、とってもわかりやすい気づきをくれたのね♪」
キラ:「みたいだね♪」
神様の話で盛り上がるリーナとキラ、願い事の話で盛り上がるユリとサクラを見ながらジュンはにわかには信じきれないものの
“もしかしたらほんとに神さんの姿を見たのか?”
そんな事を考えながら貰った幸せのお裾分けを眺め思いを馳せるのでした。
黒猫リーナとライオンのキラは今日も仲良し。
目に見える存在の暖かさと目に見えない存在の暖かさを感じながらかけがえのない繋がりを結び思い出の印を刻みます。
後日談
キラ:「あっ!そうそう!リーナ。」
リーナ:「ん?」
キラ:「今度、ジュンが繋結印を集めに行く時、一緒に行きたいって!」
リーナ:「えっ?ジュンが?」
キラ:「そう!びっくりだろ?なんでもあの日の夜、リーナのお土産が嬉しかったらしくて枕元に置いて寝たらしいんだけど…見たんだって…」
リーナ:「見たって?何を?」
キラ:「お供物に囲まれてお腹がまん丸になった猫又様(笑)」
リーナ:「えぇ!?猫又様を!?」
キラ:「そそ♪それに紙袋にたっぷりのお土産まで待たされたらしい(笑)」
キラはすっごくおかしそうにジュンから聞いた夢の話を身振り手振りを交えながらニコニコして話します。
キラ:「まぁ。ジュン曰く、リーナ達の話を聞いてたからそんな夢を見たのかも?とは言ってたけどね♪」
キラ:「ただね…」
キラは含みのある笑みを浮かべながらニヤリと笑います。
リーナ:「ただ…?」
キラ:「ふふん♪ジュンが目を覚ましたらさ…降ってきたんだって…」
リーナ:「???…降ってきた?」
リーナは不思議そうに小首をかしげてキラの続きを待ちます。
そんなリーナの様子を楽しそうに見ながらいたずらっ子のような顔でキラが言いました。
キラ:「リーナがあげたお土産の葉っぱ♪」
リーナ:「???あのお土産の葉っぱが…?」
キラ:「そそ♪こう…ヒラヒラ~♪って風に舞いながらゆっくりと落ちてきてジュンの鼻の上に着地したんだってさ♪」
キラ:「オレ、それ聞いたときなんかその光景が頭の中に浮かんじゃってさ~。」
キラ:「きっと。ジュンったら少し寄り目になりながらビックリして目をまん丸くしてたのかと思ったら…もうおかしくって♪おかしくって♪」
リーナ:「ふふ♪猫又様、よっぽどジュンに気づいてほしかったのね♪」
キラ:「みたいだね♪」
キラとリーナがジュンの話で和やかに盛り上がるその時、森の奥ではジュンが密かに印帳を貰いに行ってたんだとか。
おしまい♡