黒猫のリーナとライオンのキラはいつも一緒。とても仲良し。
宇宙動物ヒーローと白ねこ容疑者
黒猫リーナとライオンのキラは今日も仲良し。いつも一緒のはずが…今日は別行動をしているみたい。
どうやら、ライオンのキラがみんなを集めてなにやらナイショの話があるそうです。
一体、なにを企んでいるんでしょうかね ?
意気揚々とみんなの前に立ち、話し出します。
~秘密の作戦会議~
キラ:「みんな、おはよ~ ! キラだよ~♪」
キラ:「今日はみんなに重要なミッションがあって声をかけたんだ。」
キラ:「と、いうのも最近リーナに妹分たちが出来てね…」
キラ:「名付けて、”リーナシスターズ” !! 」
キラ:「まぁ。ボクが勝手にそう読んでるだけなんだけどね…」
キラ:「意外と良いネーミングセンスだと思わない ? 」
キラ:「えっ ? さっさと本題に入れって ? 」
キラ:「少しは雑談に付き合ってくれてもいいのに…」
拗ねたように不満げに頬を膨らませ、地面を蹴るような仕草をして言います。
キラ:「えっ !? ちょっと待って !! わかったから ! 早く話すからっ !! 」
キラ:「お願いだから行かないで~」
キラ:「と、とにかく ! そのリーナシスターズの中の”ある子”を調査してほしいんだっ !! 」
キラ:「メンバー構成は以下のとおりだよ。」
キラ:「まず、トップバッターは三毛猫のサキ。」
キラ:「この子が一番初めにシスターズの仲間入りを果たした子だよ。」
キラ:「この子はすでに調査済みでね。世話焼きなだけで問題はないってわかったからいいんだけど…」
キラ:「最近、リーナはボクの言う事よりサキちゃんの言う事のほうが聞くからちょっと不満かな…」
どうやらキラは三毛猫のサキに嫉妬しているようです。
キラ:「…あっ ! いまのナシっ ! なんでもない !! 聞かなかったことにしてっ !! 」
キラ:「えっと。次は一番最後に入ったアメリカンショートヘアーのサクラ。」
キラ:「この子はダンボールに入って捨てられてたのをボクとリーナが見つけたんだけど…」
キラ:「そしたら普通、ボクがパパでリーナがママだろ ?? 」
キラ:「なのにサクラったらリーナへの崇拝は神がかってるのに、ボクにはこれっぽっちも崇拝の「す」の字もだしてくれないの !! 」
キラ:「不公平だと思わない !? 」
キラ:「えっ !? 崇拝できるようなヤツになれって ? 」
キラ:「ボクだってこれでも頑張ってるんだよ~(泣)」
キラは最近タテガミが生え始め、身体もリーナより二周りほど大きくなり、
身体を鍛えたり、動物たちが怪我をしないようにゴミを拾って地域の美化に努めたり、
お手伝いを必要としている動物たちのお助けマンをしたりとちょっとずつリーナに誇れるような、
かっこいいと思ってもらえるようなヒーローとなるべく精進しているのでした。
キラ:「なのに…なのに…(ぐすん。ぐすん。)」
でも、相変わらず泣き虫なのは変わっていないようですね…(汗)
キラの話を聞いていた動物仲間たちは、そんなキラの姿を見つつ心の中でため息をつきながら早く続きを話してくれとキラに催促します。
キラ:「(…ぐすん。)…えっとね。とりあえず、このサクラも拾った時から知ってるから大丈夫。」
キラ:「調べてほしいのはこれから話す子なんだっ !! 」
キラはキリリとした顔つきになり、バンッ !! っと木の幹を手で叩きながら力説します。
キラ:「ターゲットは、二番目にシスターズ入りした白ねこのユリ。この子だ ! 」
キラ:「この子は危険だ ! ボクのカンがそう言ってるっ ! 」
そう言いながら、スパイ映画さながらの雰囲気をかもし出し、よくわからない理論を展開します。
話を聞いていた動物たちは苦笑いするもの、なにいってるんだ ? と呆れ顔のもの、
ため息をつきつつ話は聞いてくれるもの、
ちょっとわくわく気味で笑顔で聞いてくれているものなどさまざまです。
ひとりの子がキラに疑問をぶつけます。
キラ:「えっ ?? 」
キラ:「なんで危険だって感じるのかって ? 」
キラ:「よく聞いてくれたっ ! 今からボクが事前に調査した怪しい点を諸君に伝えよう。」
~白ねこ容疑者の怪しい点~
キラは仁王立ちになり、木の枝を口にくわえ、大きな木の実の帽子をかぶり、気分はどこかのドンのような感じで話し出します。
キラ:「まず、この白ねこのユリ。この子はある日、突然現れたんだ…」
キラ:「だけどね。なにが怪しいって…」
キラ:「なんとっ ! 現れた瞬間からリーナと仲良くなってたんだ…」
キラ:「普通は挨拶して自己紹介して…とか流れがあるだろ ? 」
キラ:「なのにそんなの全部すっ飛ばして、まるで昔からの知り合いとでもいうようにガッシリ抱き合って仲良くなってるんだよ…」
キラ:「そんなのおかしいだろっ ? 」
キラ:「きっと、何か怪しい魔法か何かをリーナに使ったに違いないんだっ !! 」
話を聞いていた動物たちはますます ”何を言ってるんだ…” という空気が漂います。
「キラが知らないだけですでに出会っていたのではないか ? 」と、もっともな疑問をぶつけてくる子もいます。
キラ:「だけど、リーナはユリの名前を知らなかったし、ユリもリーナの名前を知らなかったんだよ ? 」
キラ:「出会っててお互いの名前を知らないなんてことある ?! 」
キラはなおも力説します。
「たしかに全くないとは言えないけどお互いの名前を知らなかったのは不思議ね~」
と話に乗ってきてくれる子も出てきました。
キラ:「でしょ ? それに他にも怪しい点はあるっ !! 」
そう言いながら動物のひとりに協力してもらいジェスチャーを始めます。
キラ:「ユリが現れた当初の挨拶はこうっ」
ユリ:「リーナさん。こんにちわ~」
リーナ:「ユリちゃん。こんにちわ~」
キラがユリとリーナの声真似をしながら話します。
キラ:「こんな感じだったの。だけど、いまはこうっ」
ユリ:「リーナさん♪」
リーナ:「ユリちゃん♪」
(鼻でちょこんっとご挨拶してからのお互いの顔をみてニッコリ)
キラ:「座ってるときだって当初はこうっ」
キラ:「ちょっと間も空いていて、シッポの向きもバラバラだったのに…」
キラ:「いまじゃ、こうっ」
キラ:「ぴったり寄り添ってシッポの向きまでおなじなのっ !! 」
”仲良くなったら普通なんじゃないか ? ” と、またもやマトモな意見が飛び交います。
キラ:「だけどっ ! しっぽを動かすタイミングや角度まで一緒なんだよ !? 」
キラ:「合図したわけでもないのに同じタイミングで同じように動かすのっ」
キラ:「ボク、ずっと後ろから見てたから確かだもんっ !! 」
キラ:「それに。それに。しっぽだけじゃなくて顔を洗うタイミングも角度まで一緒なんだよっ !! 」
キラ:「きっとユリは宇宙動物か何かで、リーナの真似をして情報を集めて、いずれはリーナに取って代わろうとしてるに違いないんだっ !! 」
キラ:「もしくはリーナを何処かに連れて行っちゃおうとしてるとか…」
鼻息を荒くしたりアワアワしながら力説するキラに ”コイツは一体何をやっているんだ…”
そんな呆れを通り越して憐れむような視線を向けているのは年長者組です。
キラ:「ん ? ジッと見てどうしたの ? 」
キラはキョトンと首をかしげます。
~くまの説得と幼子の発想~
くまのハヤテが仕方なさそうに言いました。
ハヤテ:「あまり監視するような行動は良いこととは言えないな…」
ハヤテ:「そうゆうのをなんて言うか知ってるか… ? 」
ハヤテ:「二本足の動物の世界ではスト…」
キラ:「なっ !? べ、べつに監視してたわけじゃないよっ !! 」
キラ:「ちょうどボクが座ってる前にいたから見えただけだもんっ !! 」
キラは慌てながら必死に否定します。
どうやら、ハヤテがなんと言おうとしたのか ?
その言葉の意味などはわからずとも不穏な気配だけは感じ取ったようです。
ハヤテ:「ならいいが…仮に偶然見ただけだとしても、それで闇雲にユリを悪者にするのはいかがなものかと思うのだがな…」
キラ:「べ、べつに悪者にしようとしてるわけじゃないもん…」
キラはバツが悪そうにモゴモゴ言います。
キラ:「…だって !! このままじゃリーナが取られちゃいそうな気がして…」
ハヤテ:「取られる… ? 」
キラ:「だってそうじゃんっ !! 」
キラ:「行動もタイミングも何もかも一緒なんだよ。」
キラ:「お散歩に行きたいタイミングもお昼寝したいタイミングもお腹が空くタイミングだってボクはリーナと合わないことも多いのに…」
キラ:「リーナだって全部一緒の方が居心地いいに決まってるじゃん。」
キラ:「そしたら…ボクじゃなくて…ユリと一緒にいたほうがいいって…そう言うかもしれないじゃん…」
キラはついに観念したとでもいうように、
けれども勢いあまって本心を言ってしまったことへの後悔やどうしよう…
と不安げな様子も見せながらしょんぼりと話します。
ハヤテ:「リーナが全部一緒のほうが居心地がいいと言ったのか ? 」
キラ:「そうじゃないけど…」
ハヤテ:「ならリーナに聞いてみることだな。」
ハヤテ:「少なくともオレはリーナはそんな理由でキラと一緒にいるわけではないと思うがな。」
ハヤテ:「キラ、やきもちを焼いたり不安になるのは悪いことじゃない。」
ハヤテ:「だがな、だからと言って関係ない者を引き合いに出して自分の安定を保とうとするのは卑怯なことだと思うぞ。」
ハヤテ:「不安に思うのであれば、その気持ちを誰かに向けるのではなく解消できるように自分で行動を起こせ。」
ハヤテ:「かっこ悪くてもちゃんと相手にどうして不安なのか伝える勇気を持て。お前はヒーローになるんだろ ? 」
ハヤテはキラの目をしっかりと見ながら伝えていきます。
タテガミが生えてきたと言っても、まだキラが幼いライオンなのは変わりありませんからね。
ハヤテは今のキラが理解するには少し難しいかもしれないとも思っておりましたが、
キラはハヤテの言った言葉を自分なりにわかろうと、
一生懸命に考え込んでいる姿をみて優しく微笑みました。
そして、キラが自分の気持ちに折り合いをつけられるまで、
ハヤテの言った言葉を自分なりに噛み砕けるまでジッと待ち続けます。
しばらくの間、沈黙が続き、広場に集まっていた動物たちもふたりの様子をハラハラした様子で伺っているようです。
すると、なにかモヤが晴れたかのような表情をしたキラが喋りだしました。
キラ:「わかったよ ! ハヤテ兄ちゃんの言うとおりだよね。」
キラ:「うん。ボクがいけなかった。ユリちゃんのせいにしたらダメだよね…」
キラ:「ボクが動けばいいだけだもんね♪」
どうやらキラはハヤテの言ったことを自分なりに理解してくれたようです。
ハヤテも優しそうに微笑みキラの頭をなで、まわりにいた仲間たちも口々に
”キラ偉いぞっ♪” っとキラの成長を微笑ましく見守ります。
キラ:「へへっ♪そうと決まったらがんばるぞぉ~♪」
ハヤテ:「ゆっくりでいい。ちょっとずつでもいいからしっかり伝えるんだぞ。」
キラ:「えぇ~。ゆっくりなんてしてられないよ ! 出遅れてるのにっ ! 」
キラ:「早くリーナの所に行って観察しなきゃっ !! 」
ハヤテ:「か、かんさつ… ?? 」
まわりにいた動物たちも頭の上に「???」を浮かべています。
ハヤテ:「ど、どういう意味だ… ?? 」
さすがのハヤテも動揺が隠せません。
この後、一体キラは何を言い出すのか…頭が重くてしかたなさそうです。
すると、キラはいいました。
キラ:「どうゆう意味ってそんなの決まってるじゃん♪」
キラ:「ハヤテが言ってただろ。人のせいにするんじゃなくて自分で行動を起こせって。」
キラ:「だから決めたんだ ! ボクも宇宙動物になるって♪そうすれば問題解決じゃん♪」
みんな:「「「はぁ~~ !? 」」」
周辺にいた動物たちの声が一斉に重なりました。
どうやらこの瞬間、ここいら一体の動物たちの心はひとつになったようです…(笑)
~ボクは、宇宙動物ヒーローになる~
キラ:「すっごく悩んだんだよ…」
キラ:「ボク、ヒーローだからね。宇宙動物になったらヒーローじゃなくなっちゃうかな ? とか」
キラ:「でも、カッコ悪いままじゃいられないし…なら宇宙動物のヒーローになろうと思って♪」
キラ:「そうすれば、かっこいいままだし、リーナも離れないし♪」
キラ:「だけどユリちゃんより出遅れてるし、両立もしなきゃだから一生懸命がんばらないと…」
ほんとうに…キラは ”自分なりに” ハヤテの言葉を理解してくれたようですね…(苦笑)
まさかの発想にさすがのコハクも当分…立ち直れそうにありません。
他の年長者組もひたすらキラの言葉に頭をかかえます。
ハヤテの近くにいた動物たちがハヤテを慰めどうにかしてもらおうとしますが、
いまのハヤテの頭の中にあるのは
”幼子の発想を甘く見ていた自分への後悔とリーナになんて説明しよう…” という
すごーく頭の痛くなりそうな問題だけなのでした。
そんな、年長者組の苦悩や葛藤などつゆ知らず、キラは目を輝かせながら
”宇宙もまたにかけるスーパーヒーロー” なるものを想像して楽しそうにしているのでした♪
???「こんなところで、みんなして何をしているの ? 」
っと、誰かが問いかけました。
~問いかる謎の正体X~
ところが、キラは自分の宇宙ヒーローの妄想に大忙し、年長者組は頭を抱えてへこみ中、
その他の動物たちは年長者組を元気づけようと必死で誰もその問いかけに気づいておりません。
???「おーい。聞いてる ? 」
???「ちょっとみんなっ ! 無視しないで聞いてあげてよっ ! 」
???「ん~。忙しいのかしら ? 」
???「ちょっとみんなってばっ !! 何してるのかって聞いてるでしょ !! 」
すると、近くにいた小鳥たちが顔も向けずに答えます。
小鳥:「いまそれどころじゃないんだって ! 見てわかんない ? 」
うさぎ:「そうよ ! キラは宇宙ヒーローになるとかわけわかんないこと言い出すし…」
キツネ:「年長者組は頭抱えちゃうし…」
ひつじ:「ハヤテはさっきから、”リーナになんて説明しよう…”ってブツブツいうばっかで現実逃避から帰ってきてくれないし…」
小鳥:「あ~。もうどうしたらいいのよ…」
うさぎ:「わたし達じゃどうしようもないのに…」
キツネ:「いっその事、リーナ呼んでくればいいんじゃないか ? 」
???:「わたし… ? 」
ひつじ:「キミじゃなくてリーナだよ。だけど、秘密の作戦会議ってキラ言ってなかったか ?」
ひつじ:「呼んだら怒るんじゃ…」
???:「秘密… ? 」
うさぎ:「たしかに言ってた ! それにリーナはユリちゃんといるからいま呼んだらまずいんじゃない ? 」
???:「なんでユリと一緒にいると呼んだらまずいの ? 」
キツネ:「そりゃ~。キラはユリちゃんに負けないように宇宙動物になるって言い出して「頑張るー !! 」って意気込んでるわけだし、知られちゃまずいだろ ? 」
???:「…???」
???:「…???」
小鳥:「とりあえず、いま忙しいんだから質問なら後に…ッ…えっ !? 」
うさぎ:「小鳥さんどうし…えっ !? …り、リ、リーナとユリちゃん !?!? 」
動物たち:「「「「…え”っ !? 」」」
またもや周辺の動物たちはこころをひとつにしたようです…(笑)
口をあんぐりと開けて、ビックリした顔までそっくりになっています。
リーナ:「あら ? やっとこっちを向いてくれたわ♪」
リーナ:「それで ? 一体なんの作戦会議をしてたのかしら ? 」
リーナはにっこり微笑みながら、有無を言わさぬ迫力をかもし出しつつ尋ねます。
キラはというと先程から目を泳がせながら動物たちの後ろに隠れて様子を伺っているようです。
ひつじさんと小鳥さんがしかたないという感じでいままでの一部始終をリーナとユリに説明し始めました。
キラ:「ちょっ…ダメ~バラしちゃダメ~」
キラは動物の影に隠れながら必死に抵抗の声だけは上げています。
リーナは深いため息をつきながら、「宇宙動物ヒーローね~」と悩ましげに言っておりました。
一方、ユリはというとなぜだかちょっと満足そうな顔をしております。
他の動物たちはユリが傷ついてしまうのではないかと心配そうにしていましたが、なぜ満足気な顔をしているのか不思議でなりません。
~白猫のひそかな野望と黒猫の想い~
そんなユリにうさぎさんが聞きました。
うさぎ:「ユリちゃん。大丈夫 ? キラも悪気があったわけじゃないけどいい気分はしないでしょ ? 」
ユリ:「えっ ? なんで ? ユリすごい嬉しいよ♪」
「えっ ? 」っとまたもやみんな不思議そうな顔でユリを見つめます。
ユリ:「だってそうじゃない ? いつも一緒にいるキラがそう感じるくらい、憧れのリーナさんとユリが同じような行動してるってことでしょ ? 」
ユリ:「それって、リーナさんと同じになれたってことじゃない♪」
ユリ:「ユリ、リーナさんみたくなりたかったから頑張ってリーナさんを観察して勉強したんだもん♪」
ユリ:「ユリの目標はいつかリーナさんになることなの♪」
ユリ:「そのために頑張ってるんだから♪その効果が出てるってわかってすごくうれしい♡」
どうやら突飛な発想だと思っていたキラの予測はあながち間違いではなかったようです。
リーナ:「あら ? ユリちゃんは、わたしになりたいの ? 」
ユリ:「もちろんですよ♪リーナさんになるのがユリの夢なんですから♪」
リーナ:「あらそうなの。残念だわ…」
リーナは悲しそうに言います。
ユリ:「え…リーナさんはユリがリーナさんになるの反対ですか ? 」
リーナ:「別に反対はしないわよ。ユリちゃんが決めたことだもの。」
リーナ:「ただ、わたしはユリちゃんとお友達になったのであって、わたし自身とお友達になりたかったわけじゃないからね。」
リーナ:「だから、ユリちゃんが私になるのなら特に話したいこともなくなっちゃいそうだし、可愛い妹が消えちゃうみたいでちょっと寂しいかなって…」
ユリ:「えっ…」
ユリは驚きが隠せず、どうしていいかわからなくて今にも泣き出しそうな表情でリーナを見つめます。
そんなユリにリーナは慌てて言います。
リーナ:「あぁ…ごめんなさいね。そんな顔しないで…私の言い方が良くなかったかしら…」
リーナ:「ユリちゃんが私になるって気持ちを否定したいわけじゃないのよ。」
リーナ:「ほら。自分自身て生まれた時から一緒だし、自分とは良いことも悪いことも話したい時にいつでも話せちゃうじゃない ? 」
リーナ:「だけど、私はユリちゃんの私じゃ気づかない所とか、私が苦手な自分の感情を素直に伝える所とかがいいな♪って思ってたから…」
リーナ:「わたしになるってことはそーゆーユリちゃんの良いところが消えちゃうみたいで…」
リーナ:「それに、自分とはいつでも話せるし、そうなるとユリちゃんとあった時に何を話したらいいのかわからなくなっちゃいそうだな…ってちょっと思っただけなのよ。」
リーナ:「だからね。ユリちゃんが私になりたいのならそれを止めるつもりはないわよ。」
リーナ:「ただ、ちょっと残念ではあるけどね。」
と言いながら、リーナはユリの目をしっかりと見つめ、少し寂しそうな顔をしながら笑いました。
ユリは慌てていいます。
ユリ:「な、なら !! …中身じゃなくて見た目だけリーナさんそっくりになります ! 」
ユリ:「そ、そしたら…リーナさん、ユリと今まで通りお話できるでしょ ? 」
リーナ:「…えぇ。見た目ならお話はできるわね。」
キラ:「ダメっ ! リーナみたくなるのはボクなのっ ! 」
すかさずキラが割って入ります。
ユリ:「キラさんは大きいからリーナさんにはなれません ! 諦めてください !! 」
キラ:「ずるいぞっ ! おっきくたってリーナになれるもん !! 声マネだって得意なんだからなっ ! 」
ユリとキラはキャンキャンッと口喧嘩をはじめてしまいました。
~黒猫は喧嘩よりしっぽがお好き~
そもそも始めは、
リーナと同じ行動をすればリーナが居心地がいい(はずだから…)=リーナに一緒にいたい者として選ばれる。
と、いう理屈だったはずですが…
もう、このときにはそんなこと頭からスッと抜けてしまっているキラ。
ユリと ”どっちがリーナになるか ? ” を取り合うことに必死になっています。
いっこうに収まる気配をみせないユリとキラの口喧嘩にまわりの動物たちもどうしていいかわかりません。
ちょっとでも口を挟もうものなら、噛みつかれるか、猫パンチでも飛んできそうな勢いです。
そんなふたりをしばらく見ていたリーナでしたが、突然ひつじさんに楽しそうに話しかけます。
リーナ:「ひつじさんのシッポってかわいいわよね~♪触っていい ? 」
リーナ:「小鳥さんのシッポもヒラヒラしてて素敵だわ~♪」
リーナ:「まだ当分、終わりそうもないからふたりのことは放っといてみんなのシッポもみせて♡」
リーナは小首をコクンッっとかしげて、可愛くみんなにおねだりします。
”喧嘩を止めなくていいのだろうか ? ” とも思いましたが、
リーナがあまりに可愛くおねだりするものですからみんな自分のシッポを次々に見せはじめます。
リーナ:「まぁ♪キツネさんのシッポはフワフワね~♪」
リーナ:「あら ? キリンさんのシッポは細いのに意外と硬いのね~。」
リーナ:「ヒョウくんのシッポはわたしのとちょっと似てるわ。」
なんてことを言いながらリーナは次々と楽しそうにシッポを触っていきます。
キラとユリは、そんな楽しそうな雰囲気が気になって、気になって、しかたがありません。
ですが、先に引いた方が負けたことになる気がして…
お互い相手に ”早く引いてよ~” と思いながらなおも喧嘩を続けます。
見かねたロバさんがリーナに尋ねます。
ロバ:「リーナちゃん。あのふたり、ほんとにほっといて平気なの ? 」
リーナ:「ん ? えぇ。問題ないわよ。ほっとけばいいわ。」
ロバ:「だけど…ほ、ほら、あのふたりのシッポも触りたいって言ってみるのはどう ? 」
ロバさんは、あそこまでヒートアップしてしまったらリーナしか止められないだろうとふんで、リーナを説得するのに必死です。
リーナ:「ん~。でも、ふたりは私みたいな見た目になるらしいからね。」
リーナ:「同じシッポならわざわざ喧嘩を止めてまで触らなくても自分の触ればいいじゃない ? 」
ロバ:「そ、そうなんだけどね…(苦笑)」
リーナ:「それにね。みんなのシッポを触りたかったのは好奇心もあるけど、それだけじゃなくて覚えたかったからなの。」
ロバ:「覚える… ? 」
リーナ:「えぇ。みんなのシッポをたくさん触って覚えておけば、夜になって真っ暗でなにも見えなくても誰がそばに居るのかわかるでしょ ? 」
リーナ:「だけど…どうせふたりはこれから私と同じシッポになって、どっちがどっちか区別つかなくなるわけだし…別に覚える必要ないかなって♪」
リーナ:「それに、ふたりとも夜になったら私と同じで闇夜に同化して見えなくなっちゃうだろうし♪」
リーナ:「だから…ふたりのシッポはい~らない♪」
~黒猫はおもしろい方を選ぶ~
このリーナの最後の言葉が決めてとなり、キラとユリは勢いよく、重なるように声をあげます。
キラ:「ぼく、宇宙動物になるのやめるっ !! 」
ユリ:「ユリは、ユリのまま生きていくっ !! 」
そして、ユリとキラはお互いの顔を見合わせながら少し含みのある笑みでニタリと笑いました。
まわりにいた動物たちは、とくに説得したわけでもないのに、あっという間にキラとユリの考えを改めさせたリーナを「さすがリーナだ♪」と褒め称えておりました。
リーナはというと、そんなふたりをみて ”あら~♪息ピッタリね~♪”とのんきに関心しています。
そして、ふと思うのです。
”そういえば、キラの言ってた宇宙動物って一体どんなのかしら… ? ”
そんなことを思いながら頭のなかで想像してみます。
リーナはクスクス楽しそうに笑いながらいいました。
リーナ:「ユリちゃんはそのままでいいけど、キラは宇宙動物ヒーローになるといいと思うわ♪」
みんな:「「「えぇ~ !? 」」」
何度目でしょうか ? 今日一日で何度も驚かされている動物たちはちょっとスタミナ切れのような表情になりつつあります。
キラ:「なっ…なんでだよ~。ボクとはもう話さなくても平気ってこと… ? 」
コハク:「リーナ。せっかくキラが思い直したのになんでそんなこと言い出すんだ…」
キラはしょんぼりと、ハヤテは困ったような顔をしながらリーナに尋ねます。
そんなふたりをよそに、リーナは楽しそうに笑いながら答えます。
リーナ:「なんでって ? そんなの決まってるじゃない♪」
リーナ:「見てみたくない ? 誰も見たことない”宇宙動物ヒーロー”っての♪」
リーナ:「誰も見たことないのよ ? 泣き虫で甘えん坊でヤキモチ焼きのキラが、誰もみたことないヒーローになるのよ ? 」
リーナ:「おもしろいじゃない♪みんなだって見てみたいと思わない ? 」
キツネ:「まぁ。誰もみたことないなら見てみたいけど…」
ウサギ:「でも、宇宙動物ヒーローって一体どんなヒーローなの ? 」
リーナ:「さぁ ? わたしも見たことないもの♪」
リーナ:「でも、すっごくあったかいのは確かね♪わたしのヒーローなんだから♪」
リーナ:「それにきっと…すっごくがんばり屋で強いのに泣き虫で…」
リーナ:「言うことも突拍子もなくて、みんなをハラハラ・ドキドキさせるけど…」
リーナ:「最後には笑顔にしちゃう♪…そんなヒーローだと思うわ♪」
リーナ:「だって…キラだしっ♪」
リーナはクスクス笑いながら言います。
まわりにいた動物たちも「だって…キラだしっ♪」そう言われるとなんだか納得してしまいました。
ハヤテ:「たしかに…キラだしな。」
ハヤテもクスッと笑いながらいいます。
ほかの動物たちも「うんうん。キラだからね~」っと口々に微笑みながら語り合います。
そんなみんなの会話を聞きながら、キラはポツリとつぶやきます。
キラ:「誰もみたことのないヒーロー… ? 」
キラ:「…うん。うんっ !! ボク、誰も見たことない宇宙動物ヒーローになるよ♪」
そう言って、目をキラキラと輝かせます。
なごやかな空気に誰しもが一件落着と思った矢先、爆弾を投下したのは他でもない黒猫のリーナです。
~黒猫は気にせず爆弾を投げる~
リーナ:「あれ ? でも、よく考えてみたら宇宙動物ヒーローになる必要ないわね…」
キラ:「…えっ !? 」
”一件落着の展開だったじゃないかっ”
まわりにいた動物たちは一斉に心のなかでツッコミを入れます。
そんな動物たちのココロの内など全く気にしないとでも言うようにリーナは言います。
リーナ:「キラはすでに私のヒーローよね ? 」
キラ:「えっ ? そ、そうだけど… ? 」
リーナ:「ならもう宇宙動物ヒーローね。」
キラ:「えっ ?? 」
リーナ:「うさぎさん。あなたこの前ハヤテに助けられたって言ってたわよね ? 」
リーナ:「うさぎさんにとってハヤテはヒーローみたいだったかしら ? 」
うさぎ:「う、うん。ハヤテ兄ちゃんはヒーローみたいにかっこよかったよ。」
リーナ:「ならハヤテも宇宙動物ヒーローね。」
ハヤテ:「…え ? …オレもか ? 」
そう言いながらリーナはひとりで「やっぱりね~」と言いながらフムフムと納得しています。
みんなはリーナが何を言いたいのかわからず頭のうえに「???」を浮かべたまま困惑した様子でリーナを見つめています。
ハヤテ:「リーナ。その…俺たちにもわかるように説明してくれないか ? 」
リーナ:「ん ? だからね。キラは初めて会ったときお星さまみたいなヒーローになるって言ってたのよ。」
リーナ:「宇宙ってあのお星さまが輝いてるところのことでしょ ? 」
リーナ:「ってことは、キラはすでに宇宙動物ヒーローってことじゃない ? 」
キラ:「えっ !? そうなの ?? 」
リーナ:「うん。それにね。わたし達がいま居るこの場所もお星さまの一つだって前に二本足の動物に教えてもらったことがあるわ。」
リーナ:「ってことは、ハヤテはうさぎさんにとってのヒーローなんだからコハクも宇宙動物ヒーローってことでしょ ? 」
ハヤテ:「…な、なるほど…」
リーナ:「それに、キラやハヤテだけじゃないわ。」
リーナ:「ひつじさんはチビちゃん達からかっこいいパパだって思われてるし、キツネさんはたぬきさんからこんな良いヤツいないって言われてたでしょ ? 」
リーナ:「うさぎさんだって料理が上手くて見習いたいって言われてたし、小鳥さんはこの前、迷った子を…」
そう言いながら、リーナはひとり、ひとりに向けて話していきます。
リーナ:「みんなそれぞれにお友達だったり、家族だったり、知らない相手だったり…誰かしらから感謝されてたり、憧れられたり、すごいと思われてたり。」
リーナ:「自分が気づいてないだけで、みんな宇宙動物ヒーローの可能性もあるってことよ。」
リーナ:「むしろ、宇宙動物ヒーローになろうと思えばいつでもなれるってことね♪」
「おぉ~」っと動物たちは考えてもみなかったことに感嘆の声をあげます。
リーナ:「誰も見たことないどころか…すっごく近くにたくさんいたみたね♪」
リーナはちょっと残念さはあるものの、それでも ”それはそれで良いかも♪” と軽やかに話します。
キラは「う~ん。」と唸りながら、なにやら考え込んでいるようすです。
~太陽 ≦ スーパーBIGヒーロキラ~
そして、”よしっ ! ” と、決心のついた顔で言いました。
キラ:「ならボクはお日様みたいな…」
キラ:「ううん。やっぱり、お日さま以上に宇宙で一番でっかいお星さまのヒーローになるっ !! 」
キラ:「リーナもお日様より大っきなものなんて見たことないでしょ ? 」
キラ:「そしたら、誰もみたことないヒーローを見れたことになるよね ? ねっ ? 」
キラは目をキラキラと輝かせながらリーナに問いかけます。
リーナ:「お日様よりおっきなお星さまか~」
ユリ:「メラメラとすっごく暑そうですね…」
ハヤテ:「ん~。なんだか…その…まぶしそうだな…」
トラ:「うぁ~。危なそうだな~」
うさぎ:「わかるっ ! うっかりコケて落ちてきそうよね…」
ひつじ:「それに泣いたらすっごくうるさそうだね…」
小鳥:「でも、涙も蒸発しちゃうんじゃないかしら ? 」
キツネ:「たしかに♪ぶわぁって出て、ジュワッて感じだよな♪」
みんなが口々に言うものですからキラはちょっと不満そうです。
キラ:「ちょっと、ちょっと。みんなっ ! ひどいよ~」
そんなキラを見て、みんなは「まぁ♪頑張れよっ♪」と言いながら楽しそうに笑っています。
リーナは、”やっぱり最後には笑顔にしちゃうのよね~♪”と心の中でそっと囁きながら、
リーナ:「誰も見たことのないお日様より大きなヒーロー、楽しみにしてるわね♪」
そうキラに声をかけるのでした。
数日後…
キラはというとまずは大きくなるために…と言ってモリモリご飯を食べて
いつも以上に体を動かし大きな、大きな体作りをはじめ
ユリはというと、相変わらずリーナの所作やいい所はマネますが、前ほど全部一緒にすることは止め、
その代わりに今まで以上に今日あった嬉しかったことや驚いたことなど、感情豊かに伝えるようになり、
森の動物達の間では、しばらくの間 ”宇宙動物ヒーロー” なるものが流行ったそうです。
黒猫リーナとライオンのキラはとっても仲良し。今日も森の動物たちと一緒に笑顔いっぱいです。
おしまい♡
この物語に込めた想いとちょっとした小話や黒猫リーナが気分でやってる物語に関連する占いに
↓興味がある方はこちらからどうぞっ♡↓
宝箱の中身がまだ覗きたいって人はこっちへおいで…♡