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黒猫のリーナとライオンのキラはいつも一緒。とても仲良し。

黒猫のお手紙大作戦(上)

これは、キラとリーナがだいぶ大きくなった後のお話。

リーナもそれなりに大きくなったけど、とくに大きくなったのはライオンのキラのほう。

もともと金色のきれいな毛並みだったところに立派でフサフサなたてがみも生えてきて、

凛々しくかっこよく成長しました。

いまでは、ライオンのキラを頼っていろんな動物たちが彼の元へ来たりするらしいのよ。

キラ自身もリーナと交わしたヒーローって誓いに恥じぬよう、日々いまの自分にできることを精一杯やってるみたい。

リーナはリーナで元々しっかり者だからね。

色んな動物たちから慕われてて、いろんな子達が集まってくるから

以前じゃ考えられないくらい毎日賑やかに過ごしているそうよ。

でもね。これはしかたの無いことだとは思うけど、忙しい反面キラとリーナが一緒にいる時間が削られちゃってるみたい。

かれこれ一緒のお散歩も2週間以上も行けていないらしいわ。

おかげで見てごらんなさい。リーナったらしょんぼり尻尾を垂らしちゃって元気をなくしてる。

もちろん。リーナにもお友達はたくさんいるわ。

それに困った子を助けたりと時に忙しく、時に楽しく過ごしているの。

でもね。やっぱりキラとお散歩に行きたいのよね~。

「一緒にお散歩にいきたい ! 」って一言いえばキラならよろこんで飛びつくでしょうに…

あの子にはそのちょっとが難しいのよね。

はぁ~。もどかしくてたまらないわ。どうにかできないかしら…

でも、リーナ自身もこのままじゃいけないと思ってはいるみたいね。

どうやらちょっとだけ勇気を出してみるみたい。がんばるのよっ ! リーナ !!

~~~~~~~

~すれ違う想い~

リーナ:「おはよう。キラ」

キラ:「リーナ、おはよ~♪今日はいい天気だね♪お日様が気持ちいい~♪」

リーナ:「… (ハッ!!いまね!!)…キ、キラ !! 今日は何か予定あったんだっけ ?? 」

キラ:「えっとね~。今日はチーターのレンと一緒に見回り行って」

キラ:「シマウマ爺さんが体調くずしてるらしくて、歌で癒やしてくれって言われてるからシマウマ爺さんに会いに行って」

リーナ:「うんうん。」

キラ:「キリンの子どもたちの遊び相手して、うさぎの巣穴づくり手伝って」

キラ:「終わったらゾウ婆さんにりんごを届けに行って」

リーナ:「…………」

キラ:「あっ ! あと、最近はぐれ狼がごはんを盗むみたいだから撃退して」

キラ:「え~と。それから…」

リーナ:「……大変そうね…。気をつけて行ってくるのよ。」

キラ:「うん !! あっ ! リーナ。あした…あれっ ? 行っちゃった。。。」

キラはなんだか元気のないリーナが気になり追いかけようとしましたが、

タイミング悪くチーターのレン君がお迎えに来たのでしぶしぶ諦め、

そのまま見回りへと出発するのでした。

その頃、リーナはというとトボトボと一人でお散歩道を歩いておりました。

すると、向こうから白猫のユリちゃんがやってきました。

この白猫のユリちゃん。

リーナのことを本当の姉のように慕い、またリーナも妹のように可愛がっているねこちゃんです。

そんなユリちゃんが今のリーナを放おっておけるはずがありません。

一目散にリーナに駆け寄ると何があったのか ? を訪ねてきました。

ユリ:「リーナさん !? どうしたんですか !?!? 」

ユリ:「元気ない !! 体調でも悪いんですか ?? 」

ユリ:「あっ ! 魚の骨が喉に刺さっちゃったとか ?? 」

ユリ:「あ~してください。あ~。ユリが取ってあげますからっ ! 」

オロオロしながらユリはもの凄い勢いで話しかけます。

リーナ:「あぁ。ユリちゃんおはよう。」

リーナ:「大丈夫よ。魚の骨は刺さってないから。ありがとね。。。」

ユリ:「全然大丈夫じゃないじゃないですか !! 」

ユリ:「じゃぁ、昨日飲んだ水が傷んでてお腹が痛いとか ? 」

ユリ:「キラにまたマタタビプリン食べられちゃったとか ? 」

ユリ:「それとも、尖ったゴミを踏んじゃったとか ? あとは…え~っと~。」

リーナ:「ユリちゃん。ちょっと落ち着いて。ほんと大丈夫だから心配しないで。」

ユリ:「こんなに元気ないのに心配しないでいられるわけないじゃないですかっ !! 」

ユリ:「話してくれなきゃわかんないじゃないですか…」

ユリ:「確かにリーナさんから比べたら全然頼りにならないかもですけど…」

ユリ:「話ぐらいユリにだって聞けますよ ! 」

ユリ:「心配なものは心配なんです !! 」

ユリ:「なんにも言ってくれないなんて…そんなに私じゃ頼りになりませんか… ? 」

そう言って、ついにはユリちゃんが泣き出してしまいました。

大好きなリーナが元気がないのに何もできなくて、どうにかしたくて、心配しすぎて、

気持ちをどこに持って行っていいのかわからなくなっちゃったんですね。

こうなってしまうとリーナはどうしていいかわからずオロオロ。

自分が何も言わなかったせいで余計に心配をかけ、泣かせてしまったことを深く反省しつつ

「話すから泣き止んで~(汗)」と必死にユリちゃんをなだめるのでした。

一方、ユリちゃんはというと

リーナが話すと言うのでさっきまで泣いていたとは思えないほどの切り替えの速さで

「いつでもどうぞっ !! 」と言わんばかりの顔でリーナを待ち構えます。

もちろん、嘘泣きをしてたわけではありません。さっきまでは、本当に悲しくて泣いていたんです。

でも、ユリちゃんは気持ちの切り替えがとっても上手。感情豊かだけど、とってもタフなんです。

いま、ユリちゃんの頭の中にあるのは ”早く理由を聞いて、大好きなリーナを元気づけよう” この一択。

リーナは、そんなユリちゃんを純粋にすごいな~と関心しつつ、少し苦笑いまじりで話し始めます。

リーナ:「えっとね。ほんとたいしたことじゃないのよ…」

リーナ:「ただ、最近キラが忙しくて一緒にお散歩に行けてないからさみしいな…って。」

リーナ:「キラが忙しくしてるのがイヤとかってわけじゃないのよ ! 」

リーナ:「ほんとよ ! むしろ、みんなに頼りにされてすごいと思うし…」

リーナ:「キラの周りにみんなが集まって来てくれて、寂しくなくしてくれてホント嬉しいし…」

リーナ:「楽しそうにしてるキラを見てるのも好きだし…」

リーナ:「さすが私のヒーローだな~って思ってるんだけど…」

リーナ:「なんていうか…その…ねっ…だからね…」

モゴモゴと口ごもるリーナにユリは内心で…

”キラは、リーナさんが言えばすぐ飛んでくると思うけどな~”

”普段はしっかりしてるのに、こーゆー事となると下手というかなんというか…”

”とくにキラの事となると色々考えすぎて言えないのがリーナさんなんだよな~”

”はぁ~。キラうらやましい…ちょっと腹立つから今度キラにマタタビプリン奢って貰わなきゃ”

なんて事を考えつつ、リーナがキラに素直に気持ちを届けられる方法を考えます。

直接言えれば一番いいのだけれど…直接言えない。

かと言って自分が代わりに伝えるのもなんか違う。

どうしたものか ? と頭を悩ませているとユリのそばに花びらが一枚飛んできました。

ヒラヒラと舞うその花びらがユリの頭に乗るか乗らないかという まさにその時、ユリにピカッとひらめきが降りてきました。

~ユリのひらめき~

ユリ:「これだっ !! 」

リーナ:「えっ ??」

ユリ:「これですよ ! これっ !! 」

ユリは頭の上に乗った花びらをリーナの目の前にグッと出しながら満面の笑みで少しドヤった顔をしながら言います。

リーナ:「だから花びらがどうしたのよ ? 」

ユリ:「この花びらみたいに代わりに伝えてもらうんです♪」

リーナ:「………???」

リーナ:「… (ハッ!?) 」

リーナ:「…あっ…あのね…ユリちゃん。」

リーナ:「その…なんていうか…とっても残念なのだけど…」

リーナ:「…お花ってね。しゃべれないのよ……」

リーナはなんとも言えない表情をしながら悩み悩みユリに伝えます。

ユリはというと名案を思いついて自信満々に言ったのにも関わらず、

まさかのリーナの勘違いに慌てて半泣きになりながら否定します。

ユリ:「…えっ ? なっ !? 知ってますよ~ !!(泣)」

ユリ:「そうじゃなくてっ !! 」

ユリ:「この花びらが私の所に春を届けたみたいにリーナさんの気持ちをお手紙を書いて代わりに届けてもらうんですっ !! 」

ユリ:「名付けて ” リーナのお手紙大作戦 ” 」

リーナ:「あぁ。なんだ~そうゆうことだったのね。」

リーナ:「本当に知らなかったのかと思って、ユリちゃんを傷つけずにどう伝えればいいか本気で焦っちゃったわ…」

ユリ:「もぉ~。リーナさーん。ヒドイです~」

リーナ:「ごめん。ごめん。悪かったわ。」

半泣きのユリちゃんの頭を苦笑いしながら「よしよし」と撫でるリーナ。

傍からみると本物の姉妹のようなほのぼのとした光景が繰り広げられるのでした。

さて、お手紙を書くと決まったからには道具が必要です。

ユリとリーナは色々聞き込みをした結果、

”便箋と封筒” はセレ猫が “ペンとインク” はおサルのショウが持ってることを突き止めました。

早速、ふたりに手伝って貰えるようお願いに行きます。

セレ猫:「もちろんいいわよ♪この中から好きなのを持って行きなさい♪」

そう言うと色とりどりのレターセットが並んだ枯れ木のところまで案内してくれました。

セレ猫:「ここは、枯れ木ばかりで少し殺風景でしょ?」

セレ猫:「だからわたしの大好きな色とりどりの小物で飾ってあげてるの♪」

セレ猫:「さぁ♪この中からいくらでも好きなものを持っていってちょうだい♪」

そういったセレ猫に背中をそっと押され、ユリとリーナはさっそく探し始めます。

ずらりと並んだレターセットの山から悩んだ末にリーナが選んだのは、

「青緑色の封筒に黒猫と植物の書かれた大きなレターセット」と

「リーナのお友達、アメショのサクラちゃんにそっくりな猫の絵が書いてある小さいレターセット」

この2つをもらうことにしました。

セレ猫にお礼を伝えて出発しようとするとセレ猫がいいました。

セレ猫:「リーナ。これも持っていきなさい。」

なんだろう ? と思いつつ、セレ猫がくれた箱の中身を見てみると、

かわいい柄のテープやシール・手帳に付箋など色んな一式が入っていました。

セレ猫:「あなたがお手紙を書きたいなんて言うのは初めてのことだもの。」

セレ猫:「甘えるのが下手なあなたが頼ってきてくれたなんて…こんな嬉しいことはないわ♪」

セレ猫:「どうせお手紙を書くなら可愛くしないとね♪」

セレ猫:「それに練習も必要でしょ ? あなたが満足いくようなお手紙になるといいわね♪」

そう言ってセレ猫は優しそうに微笑みました。

リーナは、ユリに事情を話したとき

”自分が上手く伝えられないだけなのに心配かけて…”

”こんな、小さなことで悩んで呆れられられちゃうかも…”

なんてことを考えており、

手紙の材料を集めるためセレ猫の元に向かってる時でさえ

みんなに迷惑をかけてる気がして申し訳なく感じていました。

そして、セレ猫やショウに大事なものを分けてもらうこともホントに良いのか迷っていたのです。

いっその事 ”手紙を書くのも止めると言ったほうがいいのかも…” なんてことまで思ってました。

だけど、ユリちゃんが一生懸命考えてくれた方法だからそんなこと言ったら悲しむだろうか ?

そんな悩んでどっちつかずなモヤモヤした状態でセレ猫の元を訪れていたのでした。

ですが、ユリちゃんもセレ猫も “嬉しい” と言って ”自分の大したことない小さな小さな悩みごと” に心から協力してくれようとしている。

リーナは、なんだか胸がいっぱいになって、

この感情をなんて言葉で表現すればいいのかわからないけど

何かふたりに伝えたくて、でもすぐには言葉に出来そうになかったので、

ふたりに1つお願いをすることにしました。

リーナ:「…あのね。…セレ猫とユリちゃんにもお手紙書くから…書いたら貰ってくれる… ? 」

セレ猫とユリちゃんは満面の笑顔で息ぴったりに答えました。

セレ猫&ユリ:「「 もちろんっ !!!! 」」

リーナはうれしくなって「ありがとう♡」とお礼を伝え、

行きのモヤモヤと沈んだ気持ちとは打って変わって、足取り軽く楽しげに次の場所に向かうのでした。

~ショウの気づき~

おサルのショウの所に訪れたユリとリーナ。

ショウは道具を貸してくれるだけじゃなく文字を書く練習も付き合ってくれることになりました。

意気揚々と準備をしているリーナを見て少し考えた後、ショウは言いました。

ショウ:「おい。ルナ。一応、念のためにいっておくが…」

ショウ:「手紙書くのはいいけど、手紙書き終わるまではキラには絶対バレるんじゃねーぞ。」

ショウ:「もちろん、文字の練習してることもだ ! 」

ショウ:「早く書けるようになりたいからって、間違ってもキラの前で練習とか論外だからな。」

リーナ:「えっ ? なんで ? 文字の練習もバレたらダメなの ? 」

ショウ:「おいおい。ルナ。しっかりしろよ。」

ショウ:「お前。そもそも、上手く言えないから手紙書くんだろ ? 」

ショウ:「なのに、いきなり何の前触れもなく文字の練習なんてしてみろ…キラのことだ。」

ショウ:「絶対、”なんで ??” って知りたくてしょうがなくなるだろーが。」

ショウ:「あいつはお前のことで知らないままでいれるタチじゃねぇーだろ。」

ショウ:「そんときお前なんて説明するんだよ ? できねぇーだろ ? 」

リーナとショウの会話をリーナの横で聞いていたユリが割って入ります。

ユリ:「ちょっと ! ショウさん !! 」

ユリ:「さっきからリーナさんのこと「お前」とか「ルナ」とか「おまえ」って。」

ユリ:「リーナさんには “リーナ” って名前があるんだから !! 」

ユリ:「リーナさんの名前間違えないでよ ! 」

ユリ:「そ・れ・に !「お前」って呼ばないでよねっ !! 」

ユリちゃんが烈火の如くショウに文句をいいます。

ショウ:「あ”ぁ ?? 俺がどう呼ぼうが勝手だろーが」

ユリ:「よくないっ !! 」

ショウ:「あ”ー。うるせー。リーナって呼べばいんだろ。ったく。」

ユリ:「ショウさん口悪すぎっ !! 」

リーナ:「まぁまぁ。喧嘩しないの。」

リーナ:「ユリちゃん。私のために怒ってくれてありがとね。」

リーナ:「でも、いいのよ。ショウには好きなように呼んで良いって言ってあるの。」

ショウ:「だとよ。」

ユリ:「リーナさんっ !!!! 」

ユリ:「ショウさん !! リーナさんはこう言ってますけど、お前って呼ぶことは絶対許しませんからね !! 」

ショウ:「なんでお前が決めんだよ」

ユリ:「あー !! また言ったー !! 」

ふたりが キャンッ キャンッ とやり合ってる間、リーナは

“ショウって口は悪いけど、よく周りを見てて抜けてる所とか大事なことを伝えてくれるのよね~”

”それに、文句いいながらもいつも助けてくれるものね。根が優しいのよ。”

”まぁでも。言い方ひとつでショウが悪く思われちゃうのもイヤだからな~”

”かといって、ショウらしさがなくなるのも嫌だし~…ん~。あっ!そうだわ♪”

”「おまえ」呼びは他の人がいないふたりだけの時にしとくのはどう?って提案しとこうかしらね ~? ”

”答えはショウが決めればいいわ♪それが一番ショウらしいもの♪うん!そうしましょ♪”

なんて呑気なことを考えているのでした。

さて、その頃キラはどうしていたかというと…

~レンの悟り~

見回りをしているライオンのキラとチータのレン。

足取り軽く歩くレンとは対象的にキラの足取りは少しどんより。

キラ:「はぁ~。」

レン:「どうした ? キラ ? またマタタビプリン間違えて食べてリーナと喧嘩でもしたか ? 」

キラ:「なんでその話知って…!?」

キラ:「はぁ~まぁいいや。喧嘩はしてないんだけど…」

キラ:「ってかあの時以来、食べてないし。」

レン:「ならなんだ ? ついにフラれたか ? 笑」

キラ:「はぁ !? なんだよそれっ。そーゆーんじゃ…」

レン:「ふ~ん。でも、うかうかしてると他のやつに取られちゃうかもな~(笑)」

キラ:「ちょっと。変なこと言うなよな~」

レン:「わかんないだろ~(笑) 今頃リーナと楽しく遊んで…」

キラ:「ダメ!!絶対ダメ !!」

キラ:「リーナを守るのはオレの役目なんだから。絶対渡さない。」

からかうように言うレンに対し、ギロリとひと睨みしていうキラ。

さすがにこれ以上からかうと本気で怒りだしそうだと察したレンは本題を聞くことにします。

レン:「はいはい。それで ? 結局どうしたんだよ ? 」

レン:「見回りついでにオレが相談にのってやるから話してみな。」

キラ:「いや。最近忙しくてリーナと一緒に散歩に行けてなくて。」

レン:「なんだ。そんなことかよ。なら、頼みごと断ってリーナと散歩に行けばいいだろ ? 」

キラ:「そうなんだけど…」

キラ:「リーナにかっこいいヒーローだって思ってもらいたいし」

キラ:「それに困ってる仲間がいるってわかってて放っておけないだろ ? 」

”半分以上は前半の理由だろうな”と思いつつレンはいいます。

レン:「だとしてもだ。1日も空けられないわけじゃないだろ ? 」

レン:「ほんとに散歩に行きたいなら予定空けられるように動けばいいだけだろ ? 」

キラ:「わかってるよ…」

キラ:「だから明日1日のんびりリーナと過ごせるようにみんなにも協力してもらって、ばっちり予定空けたんだよ…」

キラ:「それで今日の朝、誘おうと思ってたんだけど…」

キラ:「なんかリーナの元気がなくて…話す前にどっか行っちゃうし…」

キラ:「もしかして何かの病気とか !? 話す元気も無いくらい体調が悪いとか… !? 」

どうしよう。どうしよう。と慌てだすキラをなだめながらレンは言います。

レン:「いやいや。ちょっと落ち着けって。」

レン:「そもそも明日予定空けようとしてたこと、リーナには話してたのかよ ? 」

キラ:「いや。ビックリさせようと思ってナイショにしてた。」

レン:「なら、リーナは何を話そうとしてたか知らないわけだろ ? 」

レン:「リーナも寂しがって元気がなかっただけなんじゃないか ? 」

キラ:「そうなんだけど…でも朝、話し始めた時はニコニコして元気だったのに…」

キラ:「なんか途中から急に元気なくなっちゃって…」

レン:「途中からって…それ明らかにキラとの会話に問題があるだろ…一体なに言ったんだよ…」

キラ:「なにって、ただ予定聞かれたから答えてただけなんだけど…」

レン:「ほんとか ? なんか余計なこと言ったりとか…」

キラ:「言ってないってばっ !! 」

疑いの眼差しを向けるレンにキラは手と頭をぶんぶん振りながら全力で否定します。

”まぁ、ここまで否定するなら違うのだろう” と思い、レンはもうひとつの疑問を口にします。

レン:「ってか、そもそも明日予定空けたって言ってたけどリーナは予定ないのか確認したのか ? 」

キラ:「…えっ ? …あっ……」

レン:「してないのかよ…サプライズしたかったのはわかるけど相手の都合も考えなきゃダメだろ…」

キラ:「…うん。」

あからさまにへこむキラに苦笑いしつつ、レンは言葉を続けます。

レン:「とりあえず、まずは帰ったらリーナの明日の予定を聞いてみるんだな。」

レン:「もし、リーナに予定があったら別の日にできるようにオレも協力するからさ。」

レン:「それに、朝は元気なかったかもしれないけど、もしサプライズが成功したら元気を取り戻すかもしれないだろ ? 」

“たしかに♪”っと急に元気になりしっぽをフリフリしているキラを見て、

レンは”こいつって本当は犬なんじゃないか ? ” なんてことを思いながら

“とりあえず元気になったみたいだしいいか♪” と思うのでした。

そして、しばらくふたりで見回りをした後、思い出したようにレンがいいました。

レン:「あっ ! そうだ。キラ、ヒーロー活動もほどほどにしとけよ ? 」

キラ:「うん ? 」

レン:「たしかに色々助けてもらえたら助かるのは確かなんだけど…」

レン:「それでお前自身の大事なもんが中途半端になったら意味ないだろ ? 」

レン:「予定を空けないと散歩にすらいけないんじゃ、いざリーナになにかあった時にどーやって守るんだ? って話だろ??」

キラ:「たしかに…」

レン:「それに、そんな片っ端から助けまくっててキラ自身が倒れちまったらどーすんだよ。」

キラ:「それは大丈夫♪オレ体力には自信あるんだ~♪」

”そーゆーことを言ってるんじゃないんだがな…” とは思ったものの、

これはオレが言ってもキラにはわからないだろうと諦めるレンなのでした。

キラはというと、

“リーナになにかあったとき守れないのはイヤだからいっその事、見回りにも一緒に連れて行こうかな~ ? ”

などとレンの気持ちをこれっぽっちも汲み取ることなく考えを巡らしているのでした。

そして、”夜になったら見回りの件も一緒に話してみよ~♪” などと呑気に決め、

そうと決まれば早くリーナに伝えたくてしょうがないと言わんばかりに

レンとの見回りをバリバリとこなし、その後のヒーロー活動も猛スピードで終わらせたのでした。

~すれ違う心~

先に帰って来たのはリーナでした。

リーナはキラがまだ帰ってきてないことをしっかり確認し、

少しでも早く文字が書けるようにいそいそと文字の練習に励みます。

ですがどうも上手くペンを持つことが出来ず、上手に力が入れられません。

何度もペンを落としては持ち直し、必死に文字の練習を続けます。

そして何度目かの失敗のあと、今度は少し強めに力を込めてみようとグッとペンに力を加えました。

すると、力を入れすぎてペンがリーナの手をクルンっと一回転し放物線を描きながら飛んでいってしまたのです。

”しまった…”っと思ったと同時に視界の隅に見覚えのある姿が見えました。

そう。キラです。

タイミングの悪いことにキラが帰ってきてしまったのです。

ペンはみるみるキラの方に飛んでいき、キラの目の前にポトリ…と落ちました。

リーナは、頭を真っ白にしながらその一部始終をまるでスローモーションのように見ていましたが

キラの前にペンが落ちたその瞬間、なんとか我に返ることができました。

そこからはもの凄い速さで練習に使っていた紙を爪でビリビリに引き裂き、道具を草むらに隠し、

キラの前に落ちたペンの上に覆いかぶさるように乗りました。

そして…ペンを見下ろしていたであろうキラの顔をそぉーっと見上げながら、引きつった笑顔で

リーナ:「おっ…おかえり、キラ」

というのです。

キラはというと、いきなり目の前に見覚えのないペンが降ってきたかと思ったら

まるでそれを隠すかのようにリーナが目の前に来て動かないわけです。

”あやしい…” 以外の何ものでもないその行動にジーっとリーナを見つめ

キラ:「なに隠したの… ? 」

と満面の笑みで問いかけます。

満面の笑みのはずなのにリーナにはすごーく不穏な空気がキラのまわりに漂ってるように見えました。

あまりの迫力に冷や汗が止まりません。

リーナの唯一の救いは、

紙と道具を隠した所をペンに気を取られていたキラに見られずに済んだことでしょうか。

かといって、ペンを隠しているこの状況は変わりません。

あれだけショウに注意をされていたにも関わらず、さっそくバレそうになってしまったリーナは自分の行動をひどく後悔し、

心の中で自分の頭をぽかぽか叩きながら必死になんと言おうか頭を巡らします。

キラ:「リーナ。なに、隠・し・た・の・? 」

キラがもう一度、笑顔を崩すことなく、

だけど…さっきより少し大きな声で 一文字、一文字、よく聞き取れるように尋ねてきます。

リーナは必死になんて言おうか考えます。

バラすわけにはいかない。

かといってキラに嘘をつきたくもない。

悩みに悩んだ末、リーナは苦し紛れに言いました。

リーナ:「隠してるんじゃないわ。守ってるの。」

キラ:「守ってる… ? 」

リーナ:「そう ! 守ってるのっ ! 」

リーナ:「ショウから素敵なペンを貰ったから誰にも取られないように守ってるのっ !! 」

無理くり勢いで押し通そうとしたリーナでしたが、リーナは慌てすぎて大事な事をすっかり忘れていたのです。

そう。キラがやきもち焼きだということを…

キラ:「…ふ~ん。そんなに大切なペンなんだ~。」

そう言うと、ドカドカと鼻息あらく寝床に行ってしまいました。

なんとか誤魔化すことはできたものの、あからさまに不機嫌になってしまったキラ。

リーナはどうにか機嫌を直してもらおうとペンを持ちながらキラの前に行くと

リーナ:「キラなら特別に触ってもいいよ~」

と、ペンをキラの前に差し出してみたり、

リーナ:「たまになら貸してあげるよ~」

と言ってみたり、あの手この手でペンをキラに差し出してみるものの

キラ:「いらない。興味ない。」

と全然取り合ってくれません。

ペンがダメならっ ! っと急いでリーナは隠しておいた大好きなマタタビプリンを出してきてキラに「食べていいよ♪」と言って差し出します。

キラもマタタビプリンは大好きです。

すごくすごーく食べたい気持ちもあります。

マタタビプリンをみた途端、

自然とヨダレが垂れそうになりゴクンッと喉を鳴らすほど食べたい気持ちはあります。

だけど、なんだか誤魔化された感じがしてモヤモヤして素直に食べると言えず

キラ:「いらない。」

とまた言ってしまうのでした。

”キラが甘いものを断るなんて…それも、マタタビプリンなのに…”

リーナはショックを隠しきれません。

どうしたものかと考えてみるものの、なかなかいい案は思いつきません。

せっかくキラが帰ってきたのに険悪なムードでお話すら出来なくなってしまいリーナはしょんぼり。

モヤモヤと引っ込みがつかなくなってしまったために話したかったことすら話すことが出来なくなってしまいキラもしょんぼり。

どんよりとした沈黙がふたりの間に続きます。

リーナは、キラの前にそっとマタタビプリンを置くと、トボトボとキラから少し離れた所に移動し身体を丸めて休み始めました。

キラはマタタビプリンを見つめながら考えます。

“リーナはショウから素敵なペンを貰って嬉しかっただけなのに、なんであんな態度取っちゃったんだろ…”

“リーナの大事なマタタビプリンなのに、それをオレにくれようとしたのに…いらないって言っちゃった…”

“リーナは何も悪くないのにひどいことしちゃった…”

“どうしよう…酷いやつだって思われて、リーナに嫌われちゃったらどうしよう…”

次から次へと後悔が押し寄せてくるのに…

頭では自分が悪いとわかっているのに…

誰にも取られたくないと思うほどリーナを喜ばせた贈り物(うれしいサプライズ)が

自分ではなく他の者からだったというのがキラの心にモヤモヤを作ったままなのです。

ごめん。って言わなきゃと思うのにそのモヤモヤが邪魔をしてリーナに伝えることができません。

リーナもリーナで、決して悪いことをしてるわけではないのに隠し事をしている罪悪感と

もとはと言えば ”自分が素直に伝えられない事” が発端だ…という自覚から

これ以上キラにどう声をかけていいのかわからず、ただ隅のほうで丸まることしかできません。

どれくらいの時間がたったでしょう。

お互いこのままじゃ良くないと感じたからか、

はたまた気まずい雰囲気をどうにかしたかったからなのかはふたりにしかわかりませんが、

キラもリーナも同じタイミングで歌を口ずさみはじめたのです。

少し歌って同じタイミングで歌いはじめたことにビックリしお互いの顔を見合わせます。

そして考えてることが同じだったことにおかしさを覚え、顔を見合わせながらクスクスと笑い合うのでした。

キラ:「リーナ。さっきはごめん。」

キラ:「嫌いになった… ? 」

リーナ:「ふふっ♪キラのこと嫌いになるわけないじゃない♪」

リーナ:「わたしの方こそビックリさせてごめんね。」

キラ:「へへっ♪(照)」

キラ:「ほんとはマタタビプリンすっごく食べたかったんだー♪」

キラ:「半分こして一緒に食べよう♪」

リーナ:「いいわね♪そうしましょ♪」

キラは前足の間にリーナをかかえると美味しそうにプリンを頬張り、リーナにも食べやすいサイズに爪で切り分け渡しました。

キラ:「はい♪リーナ。あ~ん。」

リーナ:「自分で食べれるわよ。」

リーナは少し照れながらも大人しく口をあけます。

ふたりはマタタビプリンの甘く美味しいその味に、先程までの険悪ムードがまるで嘘だったかのように楽しそうに食べ続けるのでした。

マタタビプリンを食べ終わる頃、キラは意を決して本題に入ります。

キラ:「ねぇ。リーナ。明日なんだけど何する予定 ? 」

リーナ:「明日はね。ユリちゃんとショウの所に行ってモジっ…」

キラ:「モジ… ? 」

リーナ:「え…えっと ! も、も~じ、も…猛獣っ !! 」

キラ:「はっ ? 猛獣 ?? 」

リーナ:「そ、そうっ !! 猛獣探しに行くの !! 」

苦し紛れにしてはヒドすぎるその内容にキラの頭は「???」でいっぱいです。

キラ:「オレがいるのにわざわざ探しにいくの… ? 」

キラ:「オレも一応、猛獣なんだけど… ? 」

リーナ:「…あっ。ほ、ほら、あれよ ! キラは探さなくてもいるじゃない。」

リーナ:「だから猛獣探しとは言えないわ。」

キラ:「う~ん。だけど、何のために猛獣探しにいくの ? 」

リーナ:「え、えっと。。。さ、最近流行ってるらしいのよ。」

キラ:「はぁっ !? 猛獣探しが… ?? 」

リーナ:「そ、そうよ ! ちまたで大人気らしいわ ! 」

キラはショウにからかわれて騙されてるんじゃないかと心配になりました。

“もし、リーナを騙してるならタダじゃおかないぞっ !! ”

とキラが心の中で思っているその時、なんの罪もないショウは背筋に悪寒が走っているのでした。

〜〜〜〜〜〜〜

ショウ:「うぉ…さむっ…なんだぁ ? 風邪でもひいたか ? 」

ショウ:「あー。めんど。風邪菌のやつら…なに許可なく勝手に入ってきてるんだよ。」

ショウ:「あー。だる。明日ルナに文字教えねぇーとだからな。」

ショウ:「しゃーねー。今日は早く寝てやるか。はぁー。」

〜〜〜〜〜〜〜

キラは、純粋に信じてしまってるであろうリーナにどうやって諦めてもらおうか模索中です。

リーナはというと苦し紛れに口から出た言葉でしたが、どうにかこのまま押し通すしかないと覚悟を決め、

”どこからでもかかってきなさい! ” とでも言うように必死にキラの次の言葉を待ち構えます。

キラ:「リーナ。いくら流行ってるからって温厚なヤツらばっかりじゃないから猛獣探しはあまりおすすめしないよ。」

キラ:「万が一、探しに行って怪我でもしたら大変だろう ? 」

リーナ:「だ、大丈夫よっ ! わたし逃げ足早いもの !! 」

リーナは自分の苦しいごまかしをなんとか押し通そうと必死です。

キラ:「………」

キラ:「でも、危険なことには変わりないだろう ? 」

リーナ:「大丈夫だってばっ ! これっぽっちも危険な要素はないからっ !! 」

リーナ:「むしろ、自分との戦いの方が大変だわっ ! 」

“どうしたら危険はないってこんな自信満々に言い切れるんだか…”

“自分との戦いがある猛獣探しっていったいなんだよ…(汗)”

なんてことを考えながら、しかたないのでキラは伝家の宝刀を抜くことにします。

キラ:「たしかに、リーナは逃げ足が早いから大丈夫そうだよね〜」

リーナ:「そうでしょっ♪」

キラ:「うんうん。あっ…でもユリちゃんとショウも早いんだっけ ? 」

リーナ:「えっ…」

キラ:「まぁ。でも、ショウは木の上に逃げられるから大丈夫か〜。」

キラ:「ユリちゃんは〜…まぁ。そこは頑張るしかないよね〜。」

リーナ:「え…えーっと…」

キラ:「万が一、ふたりが危険になったとしてもどうしても行きたいわけだしね…」

キラ:「うん。わかってて行くんだから…しょうがない。しょうがない。」

こんな言い方をしたら優しいリーナは良しとは言えないという事をキラは知ってました。

ちょっと卑怯かな ? とも思いましたが

危険なことをさせるわけにはいかないのでキラは仕方ないと自分に言い聞かせて続けます。

キラ:「まぁ。でも…万が一、何かあったときのためにちゃんと包帯とか用意しとくから安心して♪」

リーナ:「…………」

キラ:「危険がつきものの方がきっと楽しいだろうしね♪」

キラ:「ハラハラ☆ドキドキ☆思いっきり楽しんできてね♪」

満面の笑みでキラは言います。

リーナ:「や、やっぱり…猛獣探しはヤメよ ! 」

リーナは、ホントは猛獣探しなんてしないにも関わらず

キラの言葉にありもしない想像を巡らせ、顔を青白くしながら慌てて否定します。

キラ:「そうだね♪やっぱり危ないし止めといたほうがいいかもね♪」

キラは、なんとか猛獣探しを諦めてもらえて満足そうです。

キラ:「あっ ! そのかわりオレが明日、猛獣仲間をたくさん連れて行ってあげるよ♪」

リーナ:「…えっ !? 」

キラ:「猛獣見たかったんでしょ ? 」

キラ:「みんな優しいヤツらだから安心しておしゃべりできるよ♪」

キラは良かれと思って言った提案でしたが、

文字を練習したいリーナとしては、まさかの展開に気が気じゃありません。

リーナ:「いい ! 連れて来なくていい ! 」

キラ:「…えっ ? でも、猛獣に…」

リーナ:「いーの ! いーの ! 」

リーナ:「明日はショウとユリちゃんがいるだけでいーの ! 」

リーナ:「むしろ、ショウとユリちゃんだけがいいわ !! 」

キラ:「…えっ ? そ、そうなの… ? 」

キラとしては明日はリーナとふたりでお散歩をしたかった手前、

ショウとユリちゃんとの集まりにあわよくば自分も混ざろうと思っていました。

早めに切り上げれば念願のお散歩時間も確保できますからね。

ところが…

“一緒に遊ぶのはショウとユリの “ふたりだけ” がいい”

なんて言われてしまいショックを隠しきれません。

日中にレンから言われた言葉が瞬時にフラッシュバックし少し不安になります。

キラ:「そ、そうなの…そんなにショウとユリちゃんだけがいいの… ? 」

キラ:「みんなで遊んでも楽しいと…思うよ ? 」

リーナ:「明日はショウとユリちゃんだけがいい気分なの ! 」

リーナは毎日ヒーロー活動に燃えてるキラが自分のために時間を空けてるなどと夢にも思っておりませんでした。

そんなリーナはなんとかショウとユリだけの時間を確保しようと必死です。

お散歩に行きたいとお願いするためにナイショで練習の時間を確保しようとするリーナと

リーナとお散歩する時間をナイショで確保してるからなんとか混ざりたいキラ

なんとも言えないこの空回りした攻防は明け方まで続きました。

(下)に続く…

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