黒猫のリーナとライオンのキラはいつも一緒。とても仲良し。
魅惑のマタタビプリン
黒猫リーナとライオンのキラは今日も仲良し。…のはずが……
今日のふたりの雲行きはなんだかちょっと良くなさそう。
~喜びと楽しみ~
今日の黒猫リーナは上機嫌♪
シッポをピンッ ! っと立て、心なしかスキップをするような足取りでお家へ向けて歩いています。
なぜかって ? 実は、大好きなマタタビプリンがお家で待ってるからです♪
マタタビプリンとは、とっても甘く、お口に入れると トロぉ~♡ っと溶けちゃうくらいなめらかで、
鼻をぬけるマタタビの香りがなんとも芳しく、ねこ科の動物にはヤミつきになっちゃうくらい
たまらないごちそうなのです♡
そんなマタタビプリンがお家で待っていると思ったらウキウキした気分が隠しきれません。
お顔もこれでもかってくらいのニッコリ顔です。
実は、マタタビプリンが届いたのは昨日。
だけど、届いたのがご飯をたっぷり食べ終わった後だったため
キラは昨日ペロリと食べちゃいましたがリーナはどうせならお腹が空いてる時に食べようと
今日まで我慢して取っておいたのでした。
お散歩で身体を動かして準備万端♪
いよいよ、お待ちかねのマタタビプリンを心ゆくまで堪能できるわけです♪
~期待と裏切り~
リーナ:「ただいま~♪」
キラ:「おかえり~♪お散歩楽しかった ? 」
リーナ:「うん♪たっぷり運動したからお腹空いちゃった♪」
そう言いながら、”さぁ♪マタタビプリンを食べるぞ♡” っと、
リーナは草むらをかき分け、ご飯をしまっている切り株の穴からマタタビプリンを探します。
リーナ:「……………あれっ ? 」
…どういうことでしょう ?
どれだけ探してもリーナが大事にしまっておいたマタタビプリンが見当たらないのです。
リーナ:「…ない。ない ! ないっ !! 」
リーナ:「わたしのマタタビプリンがどこにもないっ !! 」
リーナ:「………まさかっ !? 」
リーナは一目散にキラの元に戻りました。
リーナ:「キラ !! わたしの取っておいたマタタビプリンしらないっ !? 」
リーナはもの凄い勢いでキラに詰め寄ります。
キラ:「えっ?? 昨日あとで食べるって持っていったじゃない ? 」
リーナ:「そうっ !! だから、今日食べようと切り株の穴にしまっておいたのがないのっ !! 」
キラ:「…えっ!? 」
キラ:「…あれ、リーナの分だったの !?!? 」
キラ:「……ごめん。オレの分だと思って食べちゃった……」
じつは、いつもならだいぶ身体が大きくなったキラのために
リーナは1つ、キラには2つ、マタタビプリンを頼んでいたのです。
ですが、今回は人気のマタタビプリンを3つ用意することができず、
なんとか手に入れられたのは2つだけでした。
もちろん。”なんとか1つずつだけでも手に入って良かったね~♪” って会話をキラともしていました。
だけど、キラったらすっかりそのことを忘れちゃってたみたいですね…
リーナ:「……………」
キラ:「ご、ごめん…ほんとにごめん…」
キラはあまりにショックを受け、石のように固まってしまったリーナに必死に謝ります。
リーナ:「…………ったのに…」
キラ:「えっ ?? 」
リーナ:「…1個だけでも大丈夫 ?? って聞いたら大丈夫って言ったのに !! 」
リーナ:「…キラなんて…キラなんて大っキライ !!!! 」
リーナはもの凄い速さでどこかにピューッと走っていってしまいました。
キラはと言うとあまりの衝撃に
ただ、呆然と走り去って行くリーナの後ろ姿を半泣きで眺めているのでした。
~悲しみと混乱~
“リーナがキライって…”
“オレの事、大っキライって言ってた…”
“どうしよう…リーナに嫌われちゃった…”
キラはこの世の終わりとでも言うようなげっそりした顔で
闇雲にウロウロとあてもなく歩き回っておりました。
どうしていいかわからず、
追いかけることも出来ず、
かといってジッともしてられず、
ただウロウロ行ったり来たり、
そんなキラの姿を見て驚いたのは広場にいた他の動物たちです。
げっそりとやつれたキラの顔をみて、
びっくりして最初に声をかけたのは白うさぎのミユです。
白兎のミユ:「ちょっとキラ。一体どうしたのよ ? 」
白猫のユリ:「キラさん大丈夫ですか ? 」
クマのハヤテ:「なんか悪いものでも食べたのか ?」
アメショのサクラ:「顔真っ青ですよ… ? 」
犬のシンさん:「家で休んでた方がいいんじゃないか ?」
口々にキラに声をかけます。
キラはみんなの声を聞いて目をうるませます。
キラ:「それが…それが…」
今にも泣き出しそうなキラにみんなは大慌て。
黒兎のミツキ:「ちょっと、キラ落ち着い。ちゃんと話聞くから。ねっ ? 」
パンダのタムさん:「泣くなよ ? 落ち着け、泣くんじゃないぞっ ? 」
黒兎のミツキとパンダのタムさんが必死になだめる間、他の動物たちは危険を察知して耳を塞ぎます。
キラはだいぶ立髪もフサフサと生えてきて身体も大きくなってますからね。
鳴き声も相当大きなもの。
耳のいい動物たちからすると大きな鳴き声を間近で聞くと言うのは、
それは。それは。大変なことなのです。
キラも必死に我慢してるみたいですが、溢れ出る涙に…もう我慢も限界。
ついには大きな声で泣き出してしまいました。
キラ:「うわぁ〜ん。どうしよう〜 !! 」
キラ:「リーナに…リーナに…」
キラ:「リーナに”大っキライ”って言われちゃったよ〜 !!!! 」
みんな:「「「えぇ~~~ !?!?!?!? 」」」
キラの周りにいた動物たちが何より驚いたのは、
キラの大きな鳴き声などではなく、その内容でした。
みんな耳を塞ぐことも忘れ、口々に言います。
ユリ:「あの、リーナさんに嫌われるって一体何したの… ? 」
シン:「あの、滅多に怒らないリーナさんをどうやって怒らせたんだ… ?」
サクラ:「リーナさんのキライを引き出したキラさんが凄すぎる…」
ハヤテ:「普段めったなことで嫌わないリーナに嫌われたってことわ…」
ミユ:「…もう、無理かも…」
キラ:「そ、そんな〜。そんなこと言わないでよ〜。」
キラはミユの身体にしがみつきます。
ミユ:「キ、キラ…くるしっ…」
シンさん:「わかった。わかったから…」
タムさん:「キラ君。とりあえず落ち着いて…手を離すんだ…」
ミツキ:「と、とりあえず詳しく事情を話してみて ? ねっ ? 」
キラ:「うん…」
キラはリーナとの間にあったことをみんなに話します。
~怒りと反省~
それを聞いて怒り出したのは他でもない、
リーナシスターズの白猫のユリ・アメショのサクラ・三毛猫のサキでした。
ユリ:「リーナさんの分まで食べちゃうなんてありえないっ ! 」
サクラ:「マタタビプリンが〜。マタタビプリンが〜。」
サキ:「リーナさん。数日前から楽しみにしてたんですよ ! キラさんひどいっ ! 」
マタタビプリンは猫たちにとって大好きな極上のデザートであり、
想像しただけでついついヨダレが落ちそうになるほどごちそうですからね。
口々に不満の声が漏れます。
キラ:「ごめんなさい…」
サキ:「私たちに言ってどうするんですかっ !! 」
サクラ:「そうですよ ! それになんですぐ追いかけなかったんですか !! 」
ユリ:「確認せずに食べちゃうなんてありえない…」
サキ:「リーナさん。可哀想…」
サクラ:「キラさんひどいっ !! 」
ユリ:「嫌われて当然よっ !! 」
休む事なく出てくる不満の声にキラはしょんぼり身体を丸まらせてます。
シン:「まぁ。まぁ。そこら辺にしてやろーよ。」
タムさん:「そうだよ。キラ君も反省してるみたいだし、怒るのもわかるけど…」
タムさん:「むやめに傷つけるのは違うだろう ? 」
サキ:「そうですけど…」
ユリ:「みんなはねこ科じゃないからこの大事さがわかんないんですよっ」
サクラ:「そうです ! そうです !! 」
ハヤテ:「だが、リーナが怒るならわかるが、ユリ達が怒っても何も解決にならないだろう。」
ユリ:「…うっ」
ハヤテ:「それともこのままキラを責め続けて、何か解決するのか ? 」
サクラ:「それは…しません…」
サキ:「そうですね…興奮してすみませんでした…」
サキ:「キラさんもすみません…」
ユリ:「キラさんごめんね…」
サクラ:「キラさんごめんなさい…」
キラ:「いーよ。いーよ。オレが悪かったのはたしかだし…」
キラ:「こっちこそ、ほんとごめんね。」
年長者組のクマのハヤテ、犬のシン、パンダのタムさんがなんとか納めてくれたようです。
~決意と協力~
その間、白うさぎのミユと黒うさぎのミツキは何かを相談してるみたいです。
どうしたんでしょうか ?
ミユ:「ねぇ。キラ。私にいい考えがあるんだけど…聞いてみる ? 」
キラ:「えっ!? なになに !? 聞くきく !! 」
ミユ:「本物には劣ると思うけど、私たちでマタタビプリンを作ってみるってのはどうかな ? 」
キラ:「作れるの !?!? 」
自分で作るなんて発想がなかったキラはビックリして目を見開きます。
ミユ:「もちろん。本物のような味は出さないけどね。でも、気持ちはちゃんと伝わると思うよ ? 」
ミツキ:「それに合わせてお花を贈るのはどうかしら ? 」
ミツキ:「ちょうど私たちの巣穴から少し行った所にひまわりが満開に咲いてるの。」
ミツキ:「私が話を通しておくから、お手伝いすればキレイなひまわりを分けてくれるはずよ。」
キラ:「ほんとに !? ミユ、ミツキ、ほんとにありがと〜♪」
キラ:「お手伝いでも料理でも出来る事ならなんでもするよっ !! 」
キラ:「お願い ! リーナと仲直りするために教えてください。お願いします ! 」
キラは深々と頭を下げます。
ミユとミツキはにっこり微笑みながら言います。
ミツキ:「もちろん。よろこんで協力させてもらうわ。」
ミユ:「美味しいマタタビプリン頑張って作ろうね♪」
キラ:「うん♪」
ミユ:「ちなみに、何個作りたいの ? 」
キラ:「えっとね~。3つ !!! 」
ミユ:「思ったより多いわね…」
ミツキ:「ちゃっかり自分の食べる分も入れてるのね…」
キラ:「ダメ~ ? 」
ミユ:「ダメではないんだけど、もしかしたらマタタビが足りないかも ? 」
キラ:「そしたら作れる分だけで大丈夫♪」
ミユ:「わかった。たぶん、2つは確実に作れるから3つは出来たらって感じでね。」
キラ:「おっけ~♪さぁ~頑張るぞ~♪」
その様子を見ていたパンダのタムさんが言います。
タムさん「どうやら解決策が決まったみたいだね♪」
タムさん:「なら、僕たちは手分けしてリーナちゃんを探しに行こうか。」
シン:「そうですね。見つけたらキラに知らせるから頑張ってマタタビプリン作れよ♪」
サキ:「リーナさんのことは任せてください♪」
ユリ:「私たちにかかればすぐ見つけちゃうんだから♪」
サクラ:「そうです♪そうです♪」
ハヤテ:「さて、行くとするか。」
キラ:「みんな、ほんとにありがとう !! 」
みんな:「「「 頑張れっ♪ 」」」
そう言うと、
ミツキはひまわり畑へ、
ほかのみんな散り散りにリーナ探しへ、
キラとミユはマタタビプリン作りのため巣穴に向かい始めました。
その頃、リーナはと言うと…
~黒猫と老木~
リーナ:「もう ! キラなんて ! キラなんて ! 」
ガリガリガリガリ…
リーナ:「なによっ ! もうっ ! なによっ ! 」
ガリガリガリガリ……
リーナ:「キラひどいっ ! キラひどいヤツ ! 」
ガリガリガリガリ………
リーナは一心不乱に文句を言いながら木の幹を鋭い爪でガリガリと引っ掻きます。
木のお爺さん「リーナちゃん。もうちょっと左側がええのう。」
リーナ:「どこ ? ここ ?? 」
木のお爺さん:「そうそう。そこそこ。」
木のお爺さん:「そこの古い皮、思いっきり剥いだくれんかの。」
リーナ:「わかったわ♪」
リーナは爪をシャキンッ☆と出して構えます。
リーナ:「…キラなんて。。。知らないんだからっ ! 」
ガリガリガリガリ…
木のお爺さん:「おぉ〜♪気持ちえぇの〜♪」
ガリガリガリガリ…
リーナ:「なにが食べちゃったよ… ! 」
ガリガリガリガリ……
木のお爺さん:「次は右側を…」
ガリガリガリガリ……
リーナ:「キラなんて ! キラなんて…」
ガリガリガリガリ………
木のお爺さん:「おぉ♪そこそこっ♪」
ガリガリガリガリ………
木々の間を暖かな木漏れ日が差し込む中、小鳥の鳴き声とリーナの爪とぎの音だけが響くのでした。
木のお爺さん:「ふぅ。リーナちゃんありがとの。お陰でスッキリしたわい。」
リーナ:「いいえ。私の方こそ少し気分が落ち着いたわ♪お爺さん、ありがとう。」
木のお爺さん:「この老木も役にたったんなら良かったわい。」
木のお爺さん:「どうじゃ ? 坊やと仲直りできそうかの ? 」
リーナ:「仲直りなんて…」
木のお爺さん:「じゃが、このままで良いとは思っとらんのじゃろ ? 」
リーナ:「そうだけど…」
木のお爺さんはそんなリーナを見て、優しそうに枝葉を揺らしながら言いました。
木のお爺さん:「ちゃんと話さなきゃわからんこともある。」
木のお爺さん:「ワシにはリーナちゃんが、そのマタタビプリンとやらを食べられたから怒ってるだけじゃないように見えるがの。」
木のお爺さん:「じゃが、ワシがわかるのは長く生きとるからこそじゃ。」
木のお爺さん:「たいていの事というのは、ちゃんと伝えないとわからんことも多い。」
木のお爺さん:「まずは坊やとしっかり話してみてはどうかの ? 」
リーナ:「…でも。」
なかなか踏み出せずにいるリーナに木のお爺さんは優しく語りかけます。
木のお爺さん:「なに。急ぐ必要はない。話を聞く時間はたっぷりあるからの。」
木のお爺さん:「坊やに言えんのであれば、まずはワシに思ってることを話してみるといい。」
木のお爺さん:「ガリガリしてくれたお礼じゃ♪」
リーナ:「私がガリガリさせてもらったのにお礼だなんて…」
木のお爺さん:「リーナちゃんのガリガリは効くからの〜♪」
リーナ:「ふふ♪お爺さんったら♪」
やっと笑顔をみせたリーナに木のお爺さんは満足そうに枝葉を揺らしました。
リーナは、ポツリ。ポツリ。と話し出します。
リーナ:「お爺さんの言うようにマタタビプリンを食べられたからだけじゃないわ…」
リーナ:「食べられちゃったのはたしかに残念だったけど、また頼めばいいもの。」
リーナ:「間違っちゃったんなら仕方ないわ…」
リーナ:「だけど…」
木のお爺さんは枝を下げて柔らかい葉でそっとリーナの頭をなでてあげます。
リーナ:「キラがね…マタタビプリン頼むときに…言ったの。」
リーナ:「2つしか頼めないってわかったときに…大丈夫 ? って聞いたら言ったのよ…」
“1つしか食べれなくてもオレだけ幸せより、一緒に幸せな方がいい”
リーナ:「そう言ってたのに…」
リーナ:「うれしかったのに…」
リーナはポロポロと金色の瞳から涙をこぼします。
木のお爺さんは大きな枝葉でそっとリーナの身体を包んであげました。
木のお爺さん:「そうか。忘れられちゃったことが悲しかったんじゃの。」
リーナ:「…うん。」
木のお爺さん:「切なかったのぅ。」
リーナ:「…うん。」
木のお爺さん:「大丈夫じゃ。坊やならきっと思い出してくれるよ。」
リーナ:「でも、もうマタタビプリンないもの…」
木のお爺さん:「なに、マタタビプリンとやらじゃなくてもいいんじゃよ。」
木のお爺さん:「さっき、リーナちゃんも言っておったじゃろ ? また頼めば良いだけじゃと。」
木のお爺さん:「それと同じじゃよ。マタタビプリンはなくとも幸せを分け合う方法は他にもある。」
木のお爺さん:「今のおまえさんに必要なのは、坊やが気づいて渡そうとした幸せを拒まぬことじゃ。」
木のお爺さん:「素直に受け取ることじゃ。」
木のお爺さん:「そして、この老木に話したみたいに少しずつでよい。思ってることを伝えてみなさい。」
リーナ:「…うん。」
木のお爺さん:「良い子じゃ…」
木のお爺さんはまた柔らかな葉でリーナの頭を優しく、そっとなでました。
小鳥達もリーナを元気づけようとリーナの周りに集まり、綺麗な歌声を聴かせてくれます。
リーナ:「お爺さん。小鳥さん。ありがとう♪」
暖かな木漏れ日が大きな老体と1匹の黒猫と小鳥達を優しく包み込んでいるのでした。
~プリンと花束~
一方、キラはというと白ウサギのミユと助っ人に来てくれたハリネズミさんと一緒にマタタビプリン作りに励んでいました。
初めてのマタタビプリン作り。
上手くできるかなんてわかりません。
でもいいのです。その代わりにありったけの想いを詰め込みます。
白うさぎと黒うさぎの巣穴には楽しげな笑い声とあまい香りが漂うのでした。
キラ:「あとは何をすればいいの ? 」
ミユ:「あとは、蒸して固めるから少し時間できるよ♪」
キラ:「ほんと !? なら、この間にひまわりのお手伝いに行ってきてもいいかな ? 」
ミユ:「もちろん♪裏手の坂を登るとひまわり畑に着くから後はまかせて♪」
キラ:「ミユ、ハリネズミさん。ほんとありがと♪」
キラ:「じゃぁ、行ってくるね ! 」
ミユ&ハリネズミ:「「いってらっしゃい~。」」
キラは早速、裏手の坂を駆け上がりました。
そこには一面ひまわりで埋め尽くされたきれいな光景が広がていました。
キラ:「わぁ~♪」
自然と歓喜の声が漏れ出ます。
日差しに照らされたひまわり達はイキイキと光り輝いておりました。
キラ:「あれ ? ミツキがいないぞ ? 」
ひまわり:「来たんだね。ミツキちゃんはリーナちゃん探しに行ったよ。」
ひまわり:「ミツキちゃんから話は聞いてるから早速手伝ってもらおうかね。」
キラ:「ひまわりさん、協力してくれてありがとう。」
キラ:「オレ、なんでもするから遠慮なく言って♪」
そう言って、キラはひまわりさんとちょこんっと握手を交わしました。
ひまわり:「ありがとね。なら、ちょっと大変だけどココのひまわりにお水をあげてくれるかね ? 」
ひまわり:「大変だったら半分でもかまわないよ。」
キラ:「うんうん。お花をわけてもらうんだからちゃんと全部にあげるよ♪」
ひまわり:「大丈夫かい ? 」
キラ:「もちろん♪じゃぁ、はじめるね~♪」
そういうと、キラはテキパキと1つ1つ丁寧にお水をあげていきます。
キラは、お水をあげながら歌を歌ってあげることにしました。
〜〜♪〜〜〜♪〜♫〜〜〜〜♪〜〜♬〜……
歌を聴いたひまわりたちは楽しげに葉を揺らします。
じょうろで水をかけられたひまわりたちは暖かな日差しをうけ、
キラキラとしずくを光らせながら嬉しそうにのびのびと茎や葉を立たせるのでした。
キラは、あっという間に全てのひまわりに水を上げ終えました。
ひまわり:「おや~すごいね~♪」
ひまわり:「もっと時間がかかるかと思ってたのにもう終わったのかい。」
ひまわり:「それに歌まで聞かせてくれてありがとね♪」
ひまわり:「おかげでひまわり達も嬉しそうだ♪」
キラ:「へへ♪良かった♪次は何をすればいいかな ? 」
ひまわり:「いやいや。もういいよ。」
キラ:「えっ ? でも、お水しかあげてないよ ? 」
キラ:「草むしりとかでもなんでも大丈夫だよ ? 」
ひまわり:「いやいや。もうこの子達も十分満足してるみたいだからね。大丈夫さ。」
ひまわり:「それに、この子たちが早く君に持っていってほしいって言ってるからね。」
ひまわり:「さぁ。この子達を早く持っていっておやり。」
キラ:「へへ♪わかった。ひまわりさんありがとう♪」
キラは、わけてもらったひまわりをキレイに包みました。
きれいなひまわりの花束が出来上がると、まるで祝福するように風が吹き、
ひまわり畑のひまわりたちがゆらゆらとまるでキラを見送るように揺れました。
キラはひまわり達に改めてお礼を言うと白うさぎのミユとハリネズミさんが待つ巣穴へ戻りました。
巣穴に戻るとミユとハリネズミさんが最後の仕上げをしている所でした。
ミユ:「キラ♪ちょうど良いところに来たね♪」
ミユ:「いま、ハリネズミさんが仕上げのさくらんぼ乗せてくれてるからちょうどできるよ♪」
キラ:「ほんと !? わぁ~♪」
キラは、ハリネズミさんがさくらんぼを乗せている姿を目をキラキラさせながら見つめます。
(ドキドキ…ドキドキ…)
ハリネズミさん:「キラ。そんなに見つめられたら乗せにくいよ…」
キラ:「ご、ごめん…」
ハリネズミさん:「ふぅ。キラ、最後のさくらんぼ。」
ハリネズミさん:「自分でのせてみるかい ? 」
キラ:「えっ!? いいの !? 」
ハリネズミさん:「あぁ。かまわないよ。」
ハリネズミさん:「だけど、ちゃんと乗せないと美味しそうに見えないからね。」
ハリネズミさん:「ゆっくりでいいから乗せてごらん。」
キラ:「わ、わかった…」
(ドキドキ…ドキドキ…)
キラは、ゆっくりと慎重に下のクリームを潰しすぎないようにさくらんぼを乗せました。
ハリネズミさん:「…………」
キラ:「ど、どうかな… ? 」
ハリネズミさん:「…うん。大丈夫だね。しっかり美味しそうに見える。」
キラ:「ほんと !? やったぁ~♪」
キラは、出来上がったマタタビプリンをうれしそうに眺めています。
キラの目には、この出来上がったマタタビプリンがキラキラと輝いて見えました。
ミユ:「結局2つしか出来なかったけど大丈夫 ? 」
キラ:「いい ! 全然いい !! 」
キラの目は、マタタビプリンに釘付けです。
まるで片時も目を離したくないというようにキラキラした瞳で見つめていました。
ミユ:「さて、そろそろラッピングするから持ってちゃうよ~。」
ミユはあまりにジッと見つめているキラにいたずらな笑みを見せながらいいました。
キラ:「えぇ~。もうちょっと。もうちょっとだけ~」
キラは名残惜しそうに言います。
ハリネズミさん:「せっかく出来上がったのに早く持っていってやらなくていいのかい ? 」
キラ:「…(ハッ !? )。ミユ !! 早く包んでっ !! 」
ミユ:「はいはい。」
ミユとハリネズミさんはおかしそうに笑いながらラッピングを始めました。
キラは、ラッピングをしてくれている間、想像を巡らします。
”リーナ、オレが作ったって言ったらびっくりするだろうな~♪”
”お花もあるっていったら喜んでくれるかな~♪”
”仲直りして、やっぱり大好き~♡って言ってくれるかも♪”
そんな想像を巡らせている間にどうやらラッピングが完了したようです。
キラは、マタタビプリンを頭の上に乗せ、花束を口にくわえました。
キラ:「ミフ、ハヒネフミはん。ほんほに、はひはほ~♪」
ハリネズミさん:「なんだって ? 」
ミユ:「う~ん。たぶん ”ありがとう” って言ってるんじゃないかな ? 」
キラ:「ホフ~♪(そう~♪)」
ハリネズミさん:「そうかい。どういたしまして。ちゃんと仲直りするんだよ♪」
キラ:「フンッ♪(うんっ♪)」
そう言って、巣穴から出ようとしたとき黒うさぎのミツキが走ってきました。
~想像と現実~
ミツキ:「…はぁはぁ。よかったわ。間に合って…」
ミツキ:「リーナの場所がわかったわよ。長老木の森にいるみたい。」
キラ:「ほんほ !? (ほんと !? )」
ミツキ:「えぇ。長老木の小鳥たちが教えに来てくれたそうよ。」
キラ:「ホウホウヒっへほうひふほ ? (長老木ってどういくの ? )」
ミツキ:「ここから北にしばらく走っていくと入り口が見えるわ。」
ミツキ:「入り口が見えたらあとはひたすら小道をまっすぐ走れば着くわよ。」
ハリネズミさん:「ミツキちゃんすごいね~。ちゃんと会話が成り立ってるよ。」
ミユ:「キラがなんて言ってるかわかるの ? 」
ミツキ:「えぇ。なんとなくだけどね。」
キラ:「はふはミフヒ♪(さすがミツキ♪)」
ミツキ:「そうでしょ♪」
ミユとハリネズミさんはなぜわかるのか不思議で仕方ないというような顔でふたりを見ていました。
さて、場所がわかればあとは向かうだけです。
キラは、みんなにお礼を伝え早速長老技に向けて出発しました。
キラは、リーナのもとへ走りながら考えます。
”えっと。まずは、リーナに謝って…それからお花を渡して…”
”マタタビプリンを見せて、みんなに協力してもらってオレが作ったって言って…”
”一緒に食べようって言って仲直りして…”
どんどん道を突き進みながらリーナにあった後のことをシミュレーションしていきます。
お花をちらさないように、マタタビプリンを落とさないように、
だけど、少しでも早くリーナの元へ走っていきます。
”ひまわり畑がすっごくキレイだったから今度一緒に行こうって言って…”
”あと、みんなにも心配かけちゃったからみんなにも一緒に会いに行こうって言って…”
”それから…一緒に…”
キラは、頭の中で考えを巡らせながら今日のリーナの悲しそうな顔を思い出してました。
”オレなんでリーナのプリン食べちゃったんだろう…”
”ちゃんと2つしかないって聞いてたはずなのに…”
”一緒に幸せをわけるって自分で言ったことだったのに…”
リーナの顔がよぎると同時に後悔もどんどんと押し寄せてきました。
“ちゃんと確認すれば良かった” “なんで忘れちゃったんだろう”
そんな気持ちが次々と湧き上がって来ます。
そして、今度こそ失敗できない !
ちゃんと謝ってシュミレーション通りにしっかりプレゼント渡して、絶対仲直りしなくちゃ !!
と、そんなことを考えているのでした。
そうこうしているうちに長老木まで到着してしまいました。
いざ到着してみると心臓がドクドクとまるで早鐘を打つように慌ただしく暴れだします。
木陰からそっと覗いてみるとそこには探していたリーナがおりました。
”リーナがいたっ !! ”
そう思うと余計に心臓の音が早くなります。
緊張で無意識のうちにツバをゴクンっと飲み込みました。
リーナが目の前にいるのに…謝ってプレゼントを渡すはずなのに…いざ目の前にすると
”許してくれなかったらどうしよう…”
”こんなのいらないって言われたらどうしよう…”
そんな不安が次々に頭をよぎります。
すると、なにかの気配を感じリーナが振り向きました。
ばっちり目のあってしまったキラとリーナ。
もう余計なことを考えてる暇はありません。
“早く言わなきゃ ! ” そう思いキラは一歩前に出ます。
キラ:「リーナっ !! 」
色々、考えてたはずなのに…ちゃんと頭の中でシュミレーションしたはずなのに…
やっぱり先に出てしまうのは涙でした。
キラ:「リーナ…ごめん…ほんとにごめん…」
グスグス涙を流しながら、お花とプリンとごめんなさいを一緒に渡します。
リーナ:「…これ ? 」
あげると言いたいのに、作ったというはずなのに、口から出てくるのは謝罪の言葉ばかりでした。
キラ:「リーナ…ごめんね。ほんとにごめんね…」
老木の葉がそっと背中を押すようにリーナの頬をなでます。
リーナ:「これ、わたしにくれるの… ? 」
キラ:「…うん。」
リーナ:「お花摘んできてくれたの… ? 」
キラ:「…うん。」
リーナ:「マタタビプリンも貰ってきてくれたの… ? 」
リーナ:「手に入れるの大変だったでしょ ? よく見つけたね。」
キラ:「…作った。」
リーナ:「作った !?!? キ、キラが作ったの !?!? 」
キラ:「…うん。」
あまりにびっくりし過ぎてリーナは目を見開きます。
キラ:「…いっぱい詰めたの…味…本物ちがう…けど…いっぱい…詰めた。」
周りで聞いていた小鳥たちは “一体なにを詰めたのだろうか ? ” と首をかしげますが、
どうやらリーナにはちゃんと伝わったようです。
リーナ:「そっか…キラ、ありがとね。」
リーナ:「一緒に食べようか♪」
キラ:「…うん。」
コクリとうなづくとキラはグズグズの鼻をすすりながら、お花をかざり、
心を込めて作った大切なマタタビプリンをリーナの前に置きます。
リーナはひまわりの匂いを嗅いで「とってもキレイね♪」と言いながらうれしそうにしています。
老木も仲直りできたふたりをみて嬉しそうにサワサワと枝葉を揺らします。
キラは少し落ち着いてきた呼吸を整え、リーナの目をみて言いました。
キラ:「リーナ。一緒にわけようって言ってたのに忘れて食べちゃってほんとにごめんね…」
キラ:「幸せを独り占めしようと思ったわけじゃないの…」
リーナ:「もういいよ。思い出してくれたんだし、もう怒ってないよ。」
キラ:「よくないっ !! 独り占めしようと思ってたわけじゃないけど…独り占めしちゃったから…」
キラ:「だから、今度こそちゃんと一緒に幸せをわけようと思って…」
キラ:「本物じゃないけど、足りない分はちゃんと気持ちをいっぱい込めたから…」
キラ:「ほんとは3つ作ってリーナから取っちゃった分を返してから分けようって思ったんだけど…」
キラ:「材料が足りなくて…だけど、みんなが協力してくれて。」
キラ:「みんなの分の気持ちも入ってるから…だから…もっかい一緒にわけてくれる ? 」
リーナ:「…うんっ♪」
リーナは満面の笑みで答えます。
キラはリーナの笑顔をみて安心したように胸をなでおろし穏やかに微笑みながら
キラ:「ありがとう…♡」
と言いました。
リーナ:「さぁ♪食べよう♪」
そういうと、リーナは目の前のマタタビプリンを興味深そうに見つめます。
リーナ:「すごいわね~♪マタタビプリンを作っちゃうなんて♪」
そう言いながら一口すくい、パクっと口に含みました。
リーナ:「ん~♡おいしい~♡」
リーナ:「本物にも引けを取らないんじゃないかしら♪」
リーナ:「キラ、すごいわね~♪とっても美味しいわよ♪」
リーナは楽しそうにパクパクと口にマタタビプリンを運びながらにっこり顔でキラに話しかけます。
キラは美味しそうに食べるリーナをみてとてもうれしそうです。
リーナ:「キラも早く食べなよ♪とっても美味しいわよ♪」
キラ:「…うん。」
ですが、キラはプリンを眺めているだけでなかなか食べようとしません。
そうこうしているうちにリーナは食べ終わってしまいました。
リーナ:「キラ ? どうしたの ? 食べないの ? 」
リーナは首をかしげて尋ねます。
キラ:「やっぱ、これリーナにあげる !! 」
リーナ:「えっ !? なに言ってるの ? それはキラの分なんだからキラが食べなさいよ。」
リーナ:「わたしはお花ももらったし、もう十分幸せもらったよ ? 」
リーナ:「だから遠慮せずにキラが食べて ? ねっ? 」
キラ:「いいの ! リーナにあげるっ !! 」
リーナ:「いいってば~。」
リーナ:「それに、一緒に食べないと分け合ったことにならないじゃない。」
リーナ:「いいからキラが食べてっ !! 」
キラ:「オレはもういっぱい貰ったの ! だからリーナにあげるのっ !! 」
そんな感じで”キラが食べて” “リーナが食べて” という押し問答がしばらく続きました。
どちらも相手に食べさせようと一歩も引かないので一向にラチが飽きません。
そんな、なんとも言えない状況を変えたのは1匹のカラカルでした。
~真実と事実~
森の奥からガサゴソと物音がします。
どうやら、マタタビプリンの匂いにつられてやってきたようです。
いち早く気づいたのはリーナでした。
一目散に駆け出します。
リーナ:「これはキラのだからあげられないのっ ! 」
リーナ:「諦めて帰ってちょうだいっ ! 」
自分より一回りは大きいであろうカラカルの前に立ちはだかり大きな声で叫びます。
こんなに急いでリーナが駆け出したのには理由があります。
最近、マタタビプリンが品薄のため力ずくでマタタビプリンを奪おうとする
ねこ科の動物たちがあらわれ始めたのです。
ねこ仲間にも何匹か被害にあい、怪我を負ったものまでおりました。
そんなわけですから相手がどんな動物かわからない以上、警戒を怠るわけには行きません。
キラのプリンを守ろうと大きな相手に必死に声を張り上げます。
リーナ:「これはあなたにはあげられないのよっ ! 」
リーナ:「今度手に入ったらそれをあなたにあげるわっ ! 」
リーナ:「だから今日は諦めて帰ってちょうだいっ !! 」
そう一生懸命に説得するリーナでしたが、カラカルも美味しい匂いに諦めきれず
カラカル「さっきから見てたけど、ずっと食べずに置きっぱなしだったじゃないか。」
カラカル「いらないってことだろ ? ならボクにちょうだいよ。」
と粘ります。
数秒、遅れてキラも駆けつけます。
キラ:「コレはリーナのだから絶対ダメっ ! 」
キラ:「君にはあげられないのっ ! 」
キラ:「代わりにお肉わけてあげるからそれで我慢してっ ! 」
リーナを自分の身体でかばうようにしてカラカルの前に立ちはだかります。
ですが、カラカルも久しく食べてないマタタビプリンの甘〜い香りに諦めきれません。
カラカル「こんな美味しそうな匂いなのにどっちも食べようとしてなかったじゃないか。」
カラカル:「それに、どっちもお互いのだって言って、まるで押し付けあってるみたいじゃないか。」
カラカル:「そんなの、ほっぺが落ちそうなほど美味しいマタタビプリンに失礼な話だろ ? 」
カラカル「なら、ボクが食べてあげたほうがマタタビプリンも喜ぶはずさ。」
カラカル「だからボクにおくれよ。」
とヨダレを垂らしながらねだります。
リーナ:「これはキラのだからあなたにあげることはできないわ。」
カラカル:「でも、カレは食べる気なさそうだったろ ? 」
カラカル:「ならボクにおくれよ。ぼくなら喜んで受け取るよ♪」
リーナ:「ダメなものはダメよ。」
リーナ:「今度また手に入ったらソレをあげるからお願いだから諦めて帰ってちょうだい。」
ですが、なかなかカラカルは諦めてくれません。
リーナがいくら今度あげると言っても「今がいいっ ! 」とまるで子どものように駄々をこねるのでした。
リーナは堂々巡りの会話にホトホト困ってしまいました。
あまりにカラカルが食べたがるもので
“こんなに食べたがってるし、仕方ないからカラカルにあげる ? “
とキラがリーナにこっそり耳打ちをしてた時です。
カラカルは食べてなかったくせに
中々くれようせず、コソコソ話をするリーナ達に不満を募らせこんな事を言い出しました。
カラカル:「さっきライオンの方は黒猫の君のだって言ってただろ ? 」
カラカル:「ってことは、君がくれると言えばボクは貰えるじゃないか。」
カラカル:「それとも何かいい?こんなに食べたがってるボクに意地悪したいからあげないって言ってるのかい ? 」
カラカル:「黒猫は意地が悪いってのはホントみたいだね。」
と言い出したのです。
それを聞いたキラは、ガォーッ !!っと
地響きが起きるのではないかというくらい大きな雄叫びをあげながら
キラ:「今からふたりで食べようとしてたんだっ !! 」
キラ:「これ以上、しつこくするならお肉もあげないぞっ !! 」
キラ:「お肉を持って大人しく帰るか、何も持たず追いかけ回されて帰るかいま決めろっ !! 」
と、カラカルに凄い剣幕で詰め寄ります。
さすがのカラカルも、もの凄い剣幕で怒るキラに恐れ慄き、お肉も持たず一目散に逃げ出しました。
キラは、リーナがひどい事を言われたので傷ついたのではないかと心配そうにリーナを見つめます。
そんな視線に気付いたのかリーナは言いました。
リーナ:「キラ、最後まで自分のお肉を分けてあげようとして偉かったわね♪」
にっこり微笑みながらリーナは言います。
キラは、そんなリーナに怒りました。
キラ:「なんだよ…お肉を分けようとして偉いって…」
キラ:「ひどい事を言われたんだからそんな無理して笑ったりなんかしなくていいっ! 」
キラはすごく悲しくなりました。
黒猫を不吉だと考えている一部の動物たちがいるのは知っていました。
そんな動物たちが面白おかしく黒猫をからかうものですから一部の黒猫はグレていたずらをしたりするようになったそうです。
そのため、黒猫は意地悪だと言い出すものまであらわれました。
ですが、リーナは決してそんなことはしません。
誰よりも優しいのをキラは知っています。
なのに知りもしないで酷いことをいうカラカルが許せませんでした。
そして、そんないわれのない事を言われたのにも関わらず笑っているリーナにも少し腹が立ちました。
ですが、そんなキラの気持ちもわかっているけど気にしてないとでもいうようにリーナは言います。
リーナ:「別に無理して笑っているわけではないわ。」
リーナ:「単純にキラが優しいな♪って思ったから自然と笑顔になっただけよ♪」
キラ:「今はそんなこと…」
リーナ:「キラ、カラカルが言ってることも間違いではないわ。」
キラ:「なっ !? 」
リーナ:「実際にそうゆう黒猫がいたのも本当のことだもの。」
リーナ:「だからこそ、そういう話が広まった。」
リーナ:「でもね。それが全てではないわ。」
リーナ:「私は自分がそうではないことを知っているし、私の知ってる黒猫たちもそうでないことも知っている。」
リーナ:「それに、わたしの大切な仲間たちやキラもちゃんと知っててくれてる。」
リーナ:「だからね。よく知らないカラカルに言われても全く気にならないわけじゃないけど、たいして気にならないわ。」
リーナ:「それよりはキラの優しさの方がわたしには話すべきことで大きなことだもの♪」
キラ:「そうかもしれないけど…」
リーナ:「それにね。今はカラカルが私のことを知らなくて酷いことを言ったかもしれないけど、いつかは違うって気づいてくれるかもしれないでしょ ? 」
リーナ:「一部では不吉だなんて言われてるけど、一部では黒猫は幸福の猫だとも言われてるのよ♪」
リーナ:「キラはどっちだと思う ? 」
キラ:「そんなの決まってるじゃない♪」
リーナ:「ふふ♪ほら、キラはちゃんとわかってくれてるでしょ♪」
キラ:「当たり前でしょ♪」
リーナ:「私にはそれで十分なのよ♪」
リーナはとても優しそうな顔で微笑みました。
キラは、そんなリーナをみて ”この笑顔を守ろう” と改めて自分に誓うのでした。
そして、あんな心ない言葉で傷つかなくていいように小さいけれど大きな一歩を踏み出す決意をするのでした。
お互いの顔をみてしばらく笑いあった後、キラはもう一つ感じていた疑問を口にします。
キラ:「そういえばリーナ。」
キラ:「普段ならさっきみたいな時、真っ先にプリンをあげようか聞いてくるのに今日は珍しくダメの一点張りだったね ? 」
リーナ:「えっ !? 」
キラ:「いや。あんな酷いこと言うやつだし、特に問題はないんだけど珍しいなって思って。」
キラ:「やっぱり、酷いこと言いそうなヤツだってわかってたの ? 」
リーナ:「酷いこと言いそうなヤツってなによ… ? 」
キラ:「だって、リーナ。相手の性格見抜くのうまいじゃん ? 」
リーナ:「そんなんじゃないわよ…」
キラ:「なら、別に理由があったの ? 」
リーナ:「それは…その…」
キラ:「……???」
リーナはモゴモゴと口ごもります。
キラ:「なに ? 言いにくいことなの ? 」
キラ:「無理に聞こうとは思わないけど…」
リーナ:「そうゆうわけじゃないんだけど…」
その時、風も吹いてないのに老木がカサカサと揺れました。
リーナには老木が “頑張れっ ! ” と言ってるように感じました。
リーナ:「……たから…だけ…」
キラ:「えっ ? 」
リーナ:「だからっ、キラが作ってくれたから誰にもあげたくなかっただけっ !!! 」
そういうと、リーナは一目散にお家に向かって走って言ってしまいました。
キラは口のあたりがムズムズして、顔がニヤけるのを止められそうにありません。
キラ:「リーナ。待ってよ~♪」
キラは満面の笑みでリーナの後を追いかけていきました。
マタタビプリンはどうしたかって ?
結局半分こして食べたそうですよ♪
黒猫リーナとライオンのキラは今日も、やっぱり仲良し♪
~後日談~
あのマタタビプリン事件から数日後のこと…
黒猫のリーナとライオンのキラが日向ぼっこをしていると
どこからか見られているような感じがしました。
キラとリーナは辺りをキョロキョロ。どうやら少し離れた木の陰から誰かが覗いているようです。
最初のうちは放おっておいたのですが長いこと見ているのでキラとリーナは相談して木陰から覗く誰かの元へ行ってみることにしました。
木陰へ近づいていくにつれ相手の姿がわかってきました。
なんと、あの夜に出会ったカラカルでした。
カラカルはまさかリーナとキラの方から来るとは思っていなかったようで大慌て。
キラはリーナを隠すようにリーナの前に立つとカラカルに言います。
キラ:「何しに来たの ? 」
キラ:「またリーナにヒドイこと言おうとしてるなら今度は本気で怒るからね。」
カラカル:「ち、違うんだっ !! …その…あの…」
どうもカラカルの歯切れが悪く、なにか言いたいようですがなかなか言い出しません。
リーナ:「なにかお話があってきたの ? 」
カラカル:「…えっと。その…」
リーナとキラは辛抱強く話し出すのを待ってみます。
カラカル:「…………」
カラカル:「その…この前…この前はヒドイこと言ってごめんっ !! 」
カラカル:「あの後、仲間たちに言われたんだ…」
カラカル:「キラとリーナは困った時に助けてくれたしいいヤツだぞって…」
カラカル:「それに相手の大事な物を取ろうとして、くれないからって悪口をいうなんてかっこ悪いし、オレの方がよっぽど意地悪だって…」
カラカル:「ほんとにごめん…仲間たちに言われたから謝ってるわけじゃなくて…」
カラカル:「ほんとに悪いと思ったんだ…」
カラカル:「仲間たちに言われてたしかにそうだなって…感情的になってヒドイことしちゃったって…」
カラカル:「許してもらえるかわからないけどお詫びのしるしにコレを貰ってくれないかい ? 」
そういうとカラカルはマタタビプリンが2つ入った箱をキラとリーナに差し出しました。
まさか、あのカラカルが謝りに来てくれるとは思っていなかったのでキラとリーナはビックリ。
ちゃんと謝りに来てくれたことがうれしくてキラもリーナもあったかい気持ちになりました。
もちろん。カラカルの謝罪を受け入れ、仲直りすることにしたようです。
だけど貰ったマタタビプリンは1つだけにしました。
なぜかって ? どうせなら一緒に食べたほうが仲良くなれそうだと思ったかららしいですよ♪
こうして、キラとリーナは1つをふたりで、
カラカルは分けてもらったマタタビプリン1つを
一緒に食べながら楽しいお話に花を咲かせていたそうです。
めでたし。めでたし。
黒猫リーナとライオンのキラ + α(カラカル)は今日も仲良し。
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